メトロポリタン歌劇場 音楽監督、ヤニック・ネゼ=セガン 合同会見
METオーケストラ来日公演2024

(C)Paola Kudacki / Met Opera

 世界最高峰のオペラハウス、メトロポリタン歌劇場(MET)の煌びやかなサウンドを司るMETオーケストラが6月、音楽監督のヤニック・ネゼ=セガンとともに13年ぶりの来日を果たす。同公演は当初22年に予定されていたが、コロナ禍で実現できず待望の日本公演となる。ネゼ=セガンは、カナダ出身の49歳。ニューヨーカーから絶大な人気を誇ったジェームズ・レヴァインのあとを継ぎ、2018年、43歳の若さでMETの音楽監督に就任した。ほかにも2012年から名門、フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督も務めるなど、世界的な活躍を続けている。

 今回の日本ツアーに用意されたプログラムは以下の2種類。

【プログラムA】
ワーグナー:歌劇『さまよえるオランダ人』序曲
ドビュッシー:歌劇『ペレアスとメリザンド』組曲 (ラインスドルフ編)
バルトーク:歌劇『青ひげ公の城』 (演奏会形式・日本語字幕付)
(メゾソプラノ:エリーナ・ガランチャ、バスバリトン:クリスチャン・ヴァン・ホーン)

【プログラムB】
モンゴメリー:すべての人のための讃歌 (日本初演)
モーツァルト:アリア「私は行きます、でもどこへ」「ベレニーチェに」(ソプラノ:リセット・オロペサ)
マーラー:交響曲第5番

 オペラハウスのオーケストラらしく、世界一流の歌手たちが顔を揃えた。
3月下旬、ネゼ=セガンとMET総裁ピーター・ゲルブのオンライン会見が行われた。

ここでは、ネゼ=セガンのインタビューを紹介する。

(c)George Etheredge

—— 今回の選曲について教えてください。

 このプログラムAの『青ひげ公の城』は、バルトークの最高傑作のひとつ、ドラマチックであらゆる色彩のパレットの表現が要求される作品です。そしてバルトークは、もし今われわれと同席していたら同意しないでしょうが、ワーグナーの影響も受けていると思います。ですから、『さまよえるオランダ人』の序曲は、『青ひげ公の城』といい組み合わせと考えます。ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』は、われわれが抜粋を演奏することは非常に珍しいですが、ミステリアスな物語のストーリーテリングにとても優れていて、バルトークへの準備としてうまく機能すると思います。
 これらの作品には共通点があり、3人の作曲家も深く結びついています。ドビュッシーはワーグナーを強く拒絶していましたが、それはワーグナーの影響を強く受けていたからなのです。ですから、ワーグナーとドビュッシーはとても良い組み合わせですし、彼らふたりの作曲家がいなければ、バルトークは『青ひげ公の城』のような傑作を作曲することはできなかったでしょう。

—— プログラムBについてはいかがでしょう?

 ジェシー・モンゴメリーはアメリカの優れた若手作曲家のひとりであり、今や世界的に知名度を高めています。昨年のMETオーケストラのヨーロッパツアーで聴衆は、同時代の作品をとても楽しんでくれたと思います。それで、今回の日本ツアーでも取り上げることにしました。
 モーツァルトでは、私たちのお気に入りの一人であるリセット・オロペサが歌ってくれることになりました。ツアーをするときは、少なくとも1つは声楽の要素を取り入れることが重要だと考えています。
 またMETオーケストラは、オペラハウスのオーケストラという性質上、ブラームス、チャイコフスキーなど、交響曲の偉大な傑作を頻繁に演奏することはありません。だからこそ、彼らがそれらを演奏するとき、何か違うものをもたらすと感じています。マーラーの交響曲は3年に1回か4年に1回のオーケストラには、まったく違うエネルギーがあります。METには素晴らしいホルン奏者、トランペット奏者、弦楽器奏者、ハープ奏者、木管楽器奏者がいて、マーラーの第5番では彼らすべての演奏がフィーチャーされています。

(c)Chris Lee

—— METオーケストラの魅力は?

 METオーケストラが他のオーケストラと違うのは、このマーラーの交響曲第5番のような演奏時間の長い交響曲でも、ワーグナーやヴェルディの大作を日常的に手がけているわれわれにとっては、何でもないということです。ですから、私が指揮者として管理できる演奏のペーシングの感覚、あるいはエネルギーのフローに、非常に異なったものがあります。私は、「ああ、最後の最後でミュージシャンが少し疲れているかもしれないからエネルギーをペースダウンしなくてはいけない」と考える必要がありません。最後の部分になっても誰もが準備ができていて、まるで始まりのときと同じくらいフレッシュなのです。そして私には多くのオーケストラとマーラーを演奏した経験があります。そのような私の経験と彼らの経験が組み合わさることで、真に特別なものが生まれるのです。

—— 今のメトロポリタン歌劇場について、また日本のファンへメッセージをお願いします。

 私はいま、歌劇場全体で何かが起きているように感じています。新しくチケットを買ってくださる方、初めてMETに来てくださる方がたくさんいて、METに新たなエネルギーが、そしてカンパニーに新たな目的意識が生じているように思います。そして、私たちの芸術的ビジョンを世界に発信していくことは非常に重要だと考えています。だからこそ、これらのツアーはとても重要なのです。例えば日本とは、「METライブビューイング」を通じて大きな繋がりを持っています。しかし、ライブ演奏を行ってファンに会い、多様なプログラムを提供することも、とても重要です。現在のMETオーケストラは、ここ数年、新しいメンバーがとりわけ増えたように思います。素晴らしい音楽家が加わりながらも、過去のクオリティを保ち、同時に以前とは違う響きも持っています。こういったことをこのツアーで披露できることを、とても楽しみにしています。

ヤニック・ネゼ=セガン指揮 METオーケストラ来日公演2024

2024.6/22(土)【プログラムA】
6/23(日)【プログラムB】
各日15:00 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
問:芸術文化センターチケットオフィス(0798-68-0255)


6/25(火)【プログラムA】
6/26(水)【プログラムB】
6/27(木)【プログラムA】

各日19:00 サントリーホール
問:クラシック事務局(0570-012-666)
https://www.met-japan-tour.jp