若き新首席が最愛のマーラー3番で第一歩を踏み出す!
2021年3月の初共演が大成功となり、日本フィルと深い信頼を築いたカーチュン・ウォンは、首席客演指揮者を経て、この9月にいよいよ首席指揮者に就任する。就任披露は、マーラー作品の中でも第8番に次ぐ大きな規模の交響曲第3番。カーチュンが2016年グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝した際の課題曲であり、最も愛する曲のひとつでもある。
カーチュンは作品について「6つの楽章で構成され、第1楽章は世界の創生、第2楽章は木や花の音楽、第3楽章が動物、第4楽章は人間、第5楽章が天使、第6楽章は愛。人間のステージをすべて上書きするような形で音楽が膨らんでゆくところがとても好きです」と説明する。
日本フィルでは、これまでマーラーの交響曲第4番と第5番を指揮したが、作曲もするカーチュンの徹底した楽曲分析による、スコアの裏の裏まで見通す明晰さが驚異的だった。ソロ・トランペット奏者のオッタビアーノ・クリストーフォリは「マーラーはすべての指示を楽譜に書いている。指揮者は料理人の勘ではなく、グラムや温度まで精密に計るケーキ職人のようでなければならない。その点、カーチュン・ウォンは最高だ」と語る。
第1楽章冒頭の8本のホルンによる斉奏、第3楽章のポストホルン、第4楽章のメゾソプラノ・山下牧子が歌うニーチェ『ツァラトゥストラはかく語りき』の一節、児童合唱で始まる第5楽章、二組のティンパニが大団円を築く感動的な第6楽章など、聴きどころも満載。記憶に残る演奏会になることだろう。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2023年10月号より)
第754回 東京定期演奏会【配信あり】
2023.10/13(金)19:00、10/14(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp