ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

ヤナーチェクの大傑作で感じるマエストロの真骨頂

上段左より:ジョナサン・ノット (c)K.Miura/TSO/カテジナ・クネジコヴァ (c)Petr Weigl/ステファニー・イラーニ
下段左より:マグヌス・ヴィギリウス/ヤン・マルティニーク

 音楽監督ジョナサン・ノットと東京交響楽団の名コンビが、この秋も非常に興味深いプログラムを披露してくれる。曲はドビュッシー(ノット編)の交響的組曲「ペレアスとメリザンド」とヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」。ともに20世紀前半の傑作として名高い作品であるが、ライブで聴く機会は貴重。精緻にして繊細なドビュッシーと、荒々しいエネルギーに満ちあふれたヤナーチェクという両作品の対照性も興味深い。

 本来、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」はメーテルランクの戯曲にもとづいたオペラ。ノットはこれをオーケストラのみで演奏できる交響的組曲に仕立てている。これまでにもエーリヒ・ラインスドルフ版など、同様の試みはあったが、それらが名場面集的な組曲として編まれているのに対して、ノット版は約45分ほどの長さがあり、よりドラマの流れが感じられる交響詩的な手触りを期待できそうだ。

 一方、ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」は独唱者4名(カテジナ・クネジコヴァ、ステファニー・イラーニ、マグヌス・ヴィギリウス、ヤン・マルティニーク)と合唱団を必要とする大規模作品。合唱が重要な役割を果たしており、東響コーラスの活躍は大きな聴きどころ。「ミサ」と名付けられているだけに、通例のミサ曲と同様、キリエ、グロリア、クレドといった楽章から構成されているのだが、テキストは古代教会スラヴ語にもとづいている。濃厚な民族色をまとったドラマティックな音楽は教会音楽というよりも、むしろオラトリオ風というべきかもしれない。今回はポール・ウィングフィールドによるユニヴァーサル版を用いて、ヤナーチェクの複雑な書法が十全に再現される。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年10月号より)

川崎定期演奏会 第93回
2023.10/14(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

第715回 定期演奏会
10/15(日)14:00 サントリーホール

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