国際声楽コンクール東京の姉妹コンクール「プリマヴェーラ」、2023年に新設

取材・文:池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)

 国際声楽コンクール東京を主催する一般社団法人カンタームスは春の時期に開催する姉妹コンクール「プリマヴェーラ(イタリア語で「春」の意味)声楽コンコルソ」を2023年に新設することを決めた。2022年12月1日から、参加申し込みを受け付ける。両コンクールの代表および審査委員長代行を務めるカンタームス代表理事、バリトン歌手の田辺とおるに新設の背景、2つのコンクールの位置付けなどの話を聞いた。

開催期間:2023.1/22(日)〜5/8(月)
申込開始:2022.12/1(木)

――プリマヴェーラ開催に至った理由は?

「全国の声楽教師の皆さんから『春にも挑戦できる機会がほしい』とのご要望を、数多くいただいたのが動機です。受験生は推薦入試、AO入試などで早々に進学を決め、長い春休みの期間は大学生も含め、のんびり過ごすことができるようになった結果、『3ヵ月ぶりのレッスンで成長をあまり感じられなかった』といった例が増えています。『この期間もなんとか成長してほしい』とする先生たちの願いに応えて、プリマヴェーラを企画しました。3部門のうち『声楽専攻』『ミュージカル』の2部門は30歳以下に絞っての“青春”まっただ中、声楽愛好者部門は20歳以上なら誰でも受けられる“人生の春”をそれぞれ謳歌する趣向です。審査委員長には川上洋司・東京藝術大学名誉教授(テノール)、審査副委員長とコンクール代表代行には小畑朱実・武蔵野音楽大学教授(メゾソプラノ)が就きます」(田辺とおる、以下同)

左より:田辺とおる コンクール代表・審査委員長代行、川上洋司 審査委員長、小畑朱実 コンクール代表代行・審査副委員長

――国際声楽コンクール東京は2022年が第2回でしたが、前身で2009年開始の東京国際声楽コンクールから通算すると14回目に当たります。現役の声楽家の立場でコンクールを立ち上げた動機は何だったのですか?

「当時、ワーグナー楽劇の連続上演(あらかわバイロイト)の企画に携わっていて、日本人でワーグナーを歌える人を複数キャストで集めるのが非常に大変だったため、新たな人材の発掘を目的に上演と同時進行、車の両輪の形でコンクールを作りました。最初は高校、大学、一般の3部門で始め、141人が受けました。今年は声楽専攻、ミュージカル、声楽愛好者、重唱・高校生アンサンブルの4本柱で計16部門、1,443人が参加したので、当初の10倍規模に成長したことになります。民間主催の声楽コンクールの中で圧倒的に高い水準のみならず、間口の広さも大きな特色でしょう。愛好者にとってもアマチュア専門の催しではなく、プロと一体のコンクールを受けるメリットがあるはずです」

第2回 国際声楽コンクール東京・本選風景(小金井宮地楽器ホール)

――運営面でもいくつか、はっきりした個性がありますね。

「大きく分けて4点、あります。先ずは情報公開。採点結果は審査当日、審査員ごとの個人点も含めすべて公表します。過去の統計も出します。ミュージカル部門にはオペラのような声域の規定がないので、目安となる楽曲の統計まで提供。とにかく、出せるだけの数字を出しています。2番目は地区大会(予選)の段階から、その地域のできるだけ良いホールを使うことです。プロのアーティストが使用するクオリティの会場を提供しています。3番目は手書きの講評に加え、表彰式終了後にも審査員が残り、個別の講評会を行うこと。文字と口頭では内容の重みが違いますし、面と向かってコメントを聞けば真剣にならざるを得ません。4番目は他の声楽コンクールと比べ、規約が詳細であること。『まあ、いいよ』を排し、全国の声楽界に向けたアピールも念頭に置いています。結論的には、『歌手が作ったコンクール』です。私も35歳までは山ほど受けたので、『やってもらって嬉しかったこと』を最大限に取り入れ、『やってほしくなかったこと』を極力排除する方向で、今の体裁を整えました」

第2回国際声楽コンクール東京・本選風景(左:清瀬けやきホール、右:川口リリア音楽ホール)

――ミュージカル部門の楽曲統計も含め、情報や規約の詳細にこだわる理由をお聞かせください。 

「ミュージカルの場合、年齢や技術水準に不相応な選曲、劇的興奮を過剰に演出しようとしてバランスを崩した声などにより、本人も先生も頑張ったのに成績を出せないケースが散見されます。楽曲統計の提供が、より良い成績への助けとなれば幸いです。規約を詳細に書く目的は『芸術作品と向き合う心構え』、特に『作品へのリスペクト』を啓発することにあります。つくり手の意図、歌詞の内容、音楽の様式にかなった演奏に対する自覚は、プロもアマチュアも大人も子どもも大切にするべき価値だと考え、細々と規約に書き込みました」

 プリマヴェーラ声楽コンコルソの開催について、川上、小畑両氏のコメントも紹介する。

 川上洋司 審査委員長
「プリマヴェーラを立ち上げた目的は、すべてのカテゴリーにおいて年齢設定をより受験しやすく、ニーズに合わせたものにすることです。例えば声楽専攻部門では音大受験を目指そうと考えている年代、すでに受験を目指している年代、音大在学中の年代、音大卒業時点で将来について考えている年代、将来声楽家としての活躍を目指している年代それぞれのニーズに合わせ、様々な情報を得ることができる場にします。ミュージカル部門も同様です。声楽愛好者部門では実質年齢制限がないため、あらゆる年代の方々と競い合うメリットがあります」

 小畑朱実 コンクール代表代行・審査副委員長
「プリマヴェーラの声楽専攻部門、ミュージカル部門は30歳以下の若い人を対象にしています。受験するカテゴリーを学籍に拘らず自由に選択できるという、他に類例のないスタイルを採用しましたので、例えば13歳や8歳の人が30歳に挑み、勝つといった“下剋上”も成り立ちます。技術や表現力を向上させるために自己研鑽し、自分を過小評価せずに年上の人と果敢に戦い、プロの道を目指して前に突き進む力を蓄えられるように、このコンクールを活用していただければと思います」

第1回 プリマヴェーラ声楽コンコルソ

開催期間:2023.1/22(日)〜5/8(月)
申込開始:2022.12/1(木)

地区大会:北海道(23.2/19)、宮城(2/18)、埼玉(2/24)、東京(2/5、3/3)、神奈川(2/22、2/23)、愛知(1/29、2/12)、大阪(3/5)、兵庫(1/22、2/4)、広島(2/11)、福岡(2/25)
東日本准本選:3/28~4/15
西日本准本選:3/30~4/3
本選:4/28~5/8

部門

カテゴリーア・カント・クラッシコ(声楽専攻部門)年齢
(1)セーディチ16歳以下
(2)ディチョット18歳以下
(3)ヴェンティ20歳以下
(4)ヴェンティトレ23歳以下
(5)トレンタ30歳以下
カテゴリーア・ミュージカル(ミュージカル部門)年齢
(6)ドーディチ12歳以下
(7)セーディチ16歳以下
(8)ディチョット18歳以下
(9)ヴェンティトレ23歳以下
(10)トレンタ30歳以下
カテゴリーア・アマトーリ(声楽愛好者部門)             年齢
(11)コラッロ20歳以上
(12)オパーレ41歳以上
(13)ルビーノ61歳以上の女声
(14)ザッフィロ 61歳以上の男声
(15)ディアマンテ74歳以上

※申込方法、コンクールの詳細はウェブサイトでご確認ください。

開催期間:2023.6/17~12/3
※申込方法、コンクールの詳細はウェブサイトでご確認ください。

問:一般社団法人カンタームス03-5926-3548
https://ivctokyo.com/