下野竜也(指揮)

あつ〜い夏に珍しい冬の名曲を

©Nanako Ito

 下野竜也とすみだトリフォニーホールとの夏恒例のコラボレーション「下野竜也プレゼンツ! 音楽の魅力発見プロジェクト」が今年も開催される。2014年に始まったこのコンサートでは、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏だけでなく、下野のトークやレクチャーが入るのが特徴となっている。これまでに、ジャズ・ピアノの山中千尋、ソプラノの中嶋彰子、トロンボーンの中川英二郎をゲストに招いたり、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を徹底大解剖したり、また、ベートーヴェンの全交響曲の第1楽章だけを演奏するコンサートや、大河ドラマのテーマ曲で構成したコンサート、山本直純の没後20年に『オーケストラがやって来た』を再現するなど、さまざまな試みがなされてきた。11回目となる今回は、「不思議な納涼コンサート〜真夏に聴く冬の名曲集〜」というテーマで、真夏に冬の音楽を聴いて涼もうという企画である。

 「すみだトリフォニーホールと地域のみなさんを結ぶコンサートとして始まりました。10年間続けてきて、オーケストラに馴染みのない方々にもご来場いただき、クラシックのコアなファンの皆さんも楽しみにしてくださるなど、世代を超えて、全方位でいろいろな楽しみ方を提供するコンサートとして、毎年1回、私もとても大切にしているプロジェクトです。

 今年は、冬の音楽を夏に聴くとどうなるのか実験してみたくなりました(笑)。いつもは経験できないようなことを体験していただきたいと思っています」

アイディアのつまったこだわりの選曲

 「まず、早川正昭さんがヴィヴァルディの編成で書かれた『バロック風日本の四季』より〈冬〉の第1楽章で、夏に『雪やこんこ』のメロディを聴いて、季節感を崩していきます。ヴィヴァルディの『四季』より〈冬〉の第2楽章では新日本フィルのコンサートマスターにソロを弾いてもらいます。続くモーツァルトの『そりすべり』ではシャンシャンという鈴の音が聞こえてきます。リムスキー=コルサコフの歌劇《雪娘》より〈軽業師の踊り〉はにぎやかな曲です。これは《雪娘》というタイトルで選びました。ホルストの『冬の牧歌』は珍しい曲ですが、10分弱の交響詩のようなカッコいい作品です。初めて聴かれる方が多いでしょうけど、知られざる佳曲です。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第3楽章には、冬を想像させるシーンがあると私は思っています。詳しくはコンサートでお話しします。独奏は、指揮者であり、ピアニストでもある、マルチに活躍されている大井駿さんにお願いしました。博覧強記で今までにないタイプの音楽家です」

ホラー映画のナンバーで身の毛もよだつ寒さに

 「夏は怪談を聞いて寒くなるというのがありますよね。そこでホラー映画『オーメン』の怖ろしい音楽を取り上げることにしました。ジェリー・ゴールドスミスの書いた『Ave Satani』は不気味な合唱付きの音楽です。“アヴェ・マリア”ではなく“アヴェ・サタニ(悪魔たち)”ですからね。最後はチャイコフスキーの交響曲第1番『冬の日の幻想』の第4楽章です。導入の部分で暗い夜が明けて、暗から明へと大自然の季節が変わっていく様子を想像します。

 今回は『冬』を看板にしていますが、珍しいオーケストラ曲や馴染みのない作品に出会って、その魅力を発見していただきたいと思っています。とどめのアンコールも含めて、想像を超えたコンサートになるでしょう」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2024年8月号より)

下野竜也プレゼンツ! 音楽の魅力発見プロジェクト 第11回
不思議な納涼コンサート~真夏に聴く冬の名曲集~

2024.8/17(土)16:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
https://www.triphony.com