高坂はる香のワルシャワ現地レポート♪1♪
ショパン・コンクールが始まります!

取材・文:高坂はる香

 10月2日に幕をあける第18回ショパン国際ピアノコンクール。2日のオープニングコンサートに続き、3日からコンクールの本大会が始まります
 それに先駆けて、9月30日の現地時間13時(日本時間20時)から記者会見が行われ、その中で演奏順の抽選も実施されるとのこと。その模様はインターネットで配信されます。

(c) Haruka Kosaka

 今回は、一番手となるコンテスタントを抽選して、そこからアルファベット順での演奏となります。このスタイルだと、同じ名字のアジア系のコンテスタントがずっと続いたり、ひいては2005年には、イム兄弟がずっと連続で演奏することになるという事態もあったりして、2010年だけはシャッフル式だったのですが、今回はコロナの影響などで遅れて来る人を除いてアルファベット順だ、ということです。
 当初はコンテスタントがみんな集まって抽選会を行うという話だったらしいですが、さすがに87人集まったらぎゅうぎゅうになっちゃう!と気づいたのか、コンテスタントの出席はなしで実施となったそうです。

 この、コンクールでの演奏順というもの。ピアニストにとっては、運を大きく左右することもあります。どういうことかといえば、たとえばシンプルに、「夜でないと調子が出ない」というような時間帯の問題、一番手はファイナルまで残りにくいというジンクス的な問題、程よい終盤のほうが印象に残りやすいという印象の要素、さらには、直前に強烈にいい演奏をされてしまうと自分が霞んでしまうかもしれないという少しおよび腰的な理由まで、いろいろなことが考えられます。とはいえ、その人がずば抜けた才能であれば、どんな演奏順で弾いても関係ないので、今挙げたことは全部どうでもいい話になってしまいますが。

(c) Narodowy Instytut Fryderyka Chopina 2020

 さて、今回のコンクール、開幕前から少々人々がざわざわする出来事が起きました。審査員を務める予定だったネルソン・フレイレさんが、病のために審査を辞退。これに伴って、マルタ・アルゲリッチさんも、この大変な時期をフレイレさんとともに過ごすため、審査を辞退するということになりました。
 代わって審査員を務めるのは、ブラジル出身のピアニスト、アルトゥール・モレイラ・リマさん(1965年、アルゲリッチさんが優勝した回の第2位です。そう考えると、あの年は上位二人が南米だったのですね)ということになりました。

 この件が発表されたのは、コンクール開始まであと1週間少々となった9月23日のことでした。まずはフレイレさんの病状が心配なところですが、加えて、憧れのアルゲリッチさんの前で弾くことを楽しみにしていたコンテスタントは多いと思うので、彼らには気の毒なところです。そしてもちろん、審査の傾向にも少なからず影響は出るはず……趣味の合う仲良しであり、影響力のある二人の票がごっそり抜けるわけですから。というのはうがった見方でしょうか(もちろん、審査員は個々の判断で審査をしているのが前提です!)。

 この後コンテスタントは、9月29日までに出場者登録、そして、スタインウェイ(2台)、ヤマハ、カワイ、ファツィオリの4社5台のピアノから楽器を選ぶセレクションに入ります。
 加えて今回は、全コンテスタントがPCR検査も受けるとのこと(このタイミングで1回検査をすることにどれほどの意味があるかはさておき)。ここまでがんばってきた全コンテスタントが無事に出場できることを強く願うばかりです。

高坂はる香 Haruka Kosaka
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体で記事を執筆。また、ポーランド、ロシア、アメリカなどで国際ピアノコンクールの現地取材を行い、ウェブサイトなどで現地レポートを配信している。
現在も定期的にインドを訪れ、西洋クラシック音楽とインドを結びつけたプロジェクトを計画中。
著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」http://www.piano-planet.com/