【CD】白鳥〜珠玉のチェロ小品集〜/海野幹雄

 その多彩なレパートリー及び広範囲な活動で知られるチェリスト海野幹雄の名曲集だが、演奏は凡百のそれとは一味異なり独特の存在価値を放つ。音は線が太く表現が雄大、それと同時に美しく繊細な音色と細やかな表現も併せ持ち、つまりは抒情性一筋でもなければ豪快さのみが前面に出るでもなく、この楽器の高いポテンシャルを存分に引き出すことに成功している。それは1曲目に収録されたサン=サーンスの「白鳥」からして明らかだし、「アンダンテ・カンタービレ」やフォーレの「エレジー」における「勁い」表現も実に印象的だ。海野春絵のサポートは慎ましやかだが的確、チェロにベストマッチ。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2021年10月号より)

【information】
CD『白鳥〜珠玉のチェロ小品集〜/海野幹雄』

サン=サーンス:白鳥/ドヴォルザーク(クライスラー編):我が母の教え給いし歌/ラフマニノフ:ヴォカリーズ/チャイコフスキー(海野幹雄編):アンダンテ・カンタービレ/バッハ=グノー:アヴェ・マリア/フォーレ:エレジー/リスト(カサド編):愛の夢/カタロニア民謡(カザルス編):鳥の歌 他

海野幹雄(チェロ)
海野春絵(ピアノ)

ティートックレコーズ
TTOC-0055 ¥3300(税込)