ボリス・ベレゾフスキー (ピアノ)

柔と剛のピアニズム

(C)David Crookes/Waner Classics
(C)David Crookes/Waner Classics

 1990年のチャイコフスキーコンクール優勝以来たびたび来日を重ね、最近ではラ・フォル・ジュルネ音楽祭の常連としてもお馴染みの、ボリス・ベレゾフスキー。がっちりとした体躯から繰り出される音はとにかく豊かで、しかし作品によっては驚くほど繊細な表現を聴かせてくれるピアニストだ。今回のプログラムは、彼のピアノが持つ、柔と剛、両方の魅力を存分に味わうことができる充実したもの。
 前半は、彼の真骨頂が発揮されるラフマニノフ。ロシアのピア二ズムを継承し、作曲家自身と同じく大きな手を持つベレゾフスキーが描き上げる、ラフマニノフの世界。ピアノソナタ第2番は特に楽しみだ。力強い冒頭の音楽、猛々しさと哀愁が交錯しながら展開する物語を、生命力に満ちた音で再現してくれるに違いない。
 そして、後半のフランスものにも注目したい。ドビュッシーの前奏曲集第1巻では、骨太な音、キレの良いリズム感、それに深みのある色彩感覚が調和した、男性的な色香をたたえる音楽が期待できる。新しいドビュッシーを見せてくれるだろう。
 一方、ラヴェルの「夜のガスパール」で発揮されるのは、ここまでとはまた一味違った彼の音楽性。ふんわりと柔らかい音、暗く深いトンネルにこだまするように響く音。光と影を克明に描き分ける演奏から、ベレゾフスキーが内に持つ繊細な感性を堪能することができる。
 ベレゾフスキーの多様な魅力、そして作品自体の新たな魅力を発見する演奏会になりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2013年11月号から)

★11月20日(水)・東京オペラシティ コンサートホール
問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotoeplus.com
他公演
11/17(日)・佐倉市民音楽ホール(043-461-6221)、11/23(土・祝)・京都/青山音楽記念館バロックザール(075-393-0011)、11/24(日)・横須賀芸術劇場(046-828-1602)