パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌 2021

オンラインで実現する充実の教育プログラム
注目アーティストたちが未来につなぐ新しい音楽祭のかたち

 昨年は惜しくも中止になってしまったパシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)だが、今年は現在のコロナ禍に対応した新しい形で開催されることが発表されている。入国制限が続く中で、国際教育音楽祭であるPMFをどのような形で開催すればよいのか。その最適解を探るべく、工夫を凝らしたプログラムが並ぶ。

 例年、PMFでは最高水準のオーケストラ教育を実施すべく、各国から若手音楽家を集めてアカデミー生によるオーケストラを組んできた。しかし現状ではアカデミー生たちが札幌に集まることは不可能。そこで、中止となったPMF2020のアカデミー生には、欧米のトップレベルの教授陣からオンラインで直接指導を受ける機会が設けられる。そして、その指導風景や指導の成果となる演奏動画が公開されることになった。

 代わって結成されるのが、国内の音楽家たちにより編成される「PMF2021オーケストラJAPAN」だ。PMF2020オーディションの合格者で国内在住のアカデミー生や国内プロオーケストラの首席奏者たち、国内で活躍中のPMF修了生や音楽大学で学ぶ若手音楽家たちが集う。

 プログラムは2種類で、それぞれ原田慶太楼と沖澤のどかが指揮を務める。音楽祭の前半、PMF 2021オープニング・コンサート(7/23)と苫小牧公演(7/24)のプログラムでは、PMF2011のコンダクティング・アカデミーでファビオ・ルイージに学んだ原田が指揮、PMF修了生たちとともにガーシュウィンのピアノ協奏曲(独奏:三舩優子)、ガーシュウィン(ベネット編)の交響的絵画「ポーギーとベス」他を演奏する。ジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督を務めるなど、アメリカで活躍する原田にふさわしいアメリカ音楽プログラムだ。ガーシュウィンでソロを担う三舩はニューヨーク育ち。コンサートマスターにはソリストとして注目を浴びる郷古廉が招かれる。

 後半のピクニックコンサート(7/31)とPMF GALA コンサート(8/1)のプログラムでは、沖澤が音大生やプロ・オーケストラの首席奏者たちとともにロシア音楽中心のプログラムを組む。曲は芥川也寸志の「弦楽のための三楽章『トリプティーク』」、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番(独奏:三浦文彰)、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」(1947年版)。プロコフィエフでは三浦が鮮烈なソロを披露してくれることだろう。

 また、今回はPMFホストシティ・オーケストラ演奏会(7/25)として、大植英次が札幌交響楽団を指揮するのも話題のひとつ。第1回PMFに、音楽祭創設者バーンスタインとともに参加した大植が、29年ぶりに登場する。曲はシューマンの交響曲第2番他。同曲はかつてバーンスタインがPMFオーケストラを指揮した思い出の曲でもある。

 オンラインのコンテンツも充実している。来日が叶わない教授陣が居住地で収録した演奏を届けるPMFファカルティ・デジタルコンサートをはじめ、オープニング・コンサートやピクニックコンサートなどが有料配信され、マスタークラス他が無料配信される。

 コロナ禍にあっても、PMFは「未来につなぐ音楽祭」として新たな歴史を刻もうとしている。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年6月号より)

2021.7/23(金・祝)〜8/1(日)
札幌コンサートホール Kitara、札幌芸術の森、函館、奈井江 他【配信あり】
6/5(土)発売
問:パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会011-242-2211
https://www.pmf.or.jp
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


※一部の日程・公演内容に変更が生じています。最新情報は上記ウェブサイトでご確認ください。