大野和士とドイツの名演出家が作り上げるワーグナーの世界
作家・村上春樹がドイツの週刊新聞「ディー・ツァイト」の招きでバイロイト音楽祭を訪れ、ティーレマン指揮《ローエングリン》とジョルダン指揮《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を観劇したという。そのレポートは今年の『文藝春秋』10月号にも掲載され、村上が《マイスタージンガー》の“舞台装置”となったヴァーンフリート荘にあるピアノの上に乗っかった写真が誌面を飾り話題を呼んだ。このバイロイトのコスキー演出をはじめ、最近のワーグナー上演では、メタシアター的構造の演出が多くみられるが、今年4月、ザルツブルク・イースター音楽祭で初演されたイェンス=ダニエル・ヘルツォーク演出の同作はドレスデンのゼンパーオーパー(ザクセン州立歌劇場)の“舞台裏”をコンセプトとしたユニークなものだった。ヘルツォークの解釈は、踏み出しすぎない“ほどの良さ”が音楽祭の観客に好評を得たようだ。このヘルツォークの演出が日本にやってくる。
今回の《マイスタージンガー》はイースター音楽祭とザクセン州立歌劇場、東京文化会館および新国立劇場の共同制作。2020年6月の東京文化会館での東京初演は大野和士がピットに入る。オーケストラは東京都交響楽団。キャストは、新国立劇場にたびたび客演しているトーマス・ヨハネス・マイヤーがザックス、ザルツブルクでも同役を演じたアドリアン・エレートがベックメッサー、トミスラフ・ムツェックがヴァルター、林正子がエーファ。かつてサヴァリッシュに学び、各地の歌劇場の要職を歴任した大野が、オペラ指揮者としての経験と能力を最大限に発揮するであろう上演。ヘルツォークと大野のコラボやいかに? ワグネリアンのみならず見逃せない舞台になりそうだ。
文:寺倉正太郎
(ぶらあぼ2019年11月号より)
2020.6/14(日)14:00、6/17(水)12:00 東京文化会館
2019.11/9(土)発売
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://opera-festival.com/
※新国立劇場、兵庫県立芸術文化センターの各公演情報は上記ウェブサイトでご確認ください。