上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

就任4年目の開幕は、より深みを帯びた王道の名作で

上岡敏之
C)堀田力丸

 上岡敏之が新日本フィル音楽監督に就任してから3年間、その共演は毎回のように充実の演奏とさまざまな話題を提供してきた。今秋からの4シーズン目は、シューベルトの全交響曲演奏を大きな柱として、その成果を広く知らしめていく。9月の開幕公演は上岡が登壇して、シューベルトの第4番とブルックナーの第7番、オーストリアの誇る大作曲家たちの名作交響曲を。

 早熟にして早逝の天才、シューベルトがわずか19歳で書いた第4番は、シリアスな音楽で「悲劇的」のタイトルを持ち、尊敬するベートーヴェンの第5番と同じハ短調であり、多感な青年の情熱が伝わる力作だ。上岡と新日本フィルにとっても、今シーズンの方向性と覚悟を示す重要な1曲となる。

 一方、ブルックナーは40代から交響曲を世に問い始め、ついに大成功を収めたのが59歳で完成した第7番。より深みを増した内容と伸びやかで美しい旋律を誇る、雄大な傑作である。さらに、この曲と上岡といえば、2007年、当時監督を務めていたヴッパータール交響楽団との日本公演で、通常60〜70分ほどの本作をなんと90分もかけて演奏、大いに喝采と議論を呼んだ。むろん「演奏は日々変わっていくもの」と語る上岡のこと、過去のテンポは参考以上の意味はない。とはいえ、「ヨーロッパの楽団のような音色が身に付き始めてきた」という新日本フィルと、どんな精妙なハーモニーを聴かせ、感性を刺激するブルックナーを作り上げるのか? 12年を経て顕れる、新たな“上岡のブル7”。注目したい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年8月号より)

第609回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2019.9/5(木)19:00 サントリーホール

特別演奏会 サファイア〈横浜みなとみらいシリーズ〉第10回
2019.9/8(日)14:00 横浜みなとみらいホール

問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp/