内に秘めた情熱が後押しする推進力と、静謐さが同居する快演だ。ヴォルフガング・ヴェルファーは、名巨ザハール・ブロン門下で唯一のヴィオリストにして、ウィーン・フィルでも活躍した名手。バッハの無伴奏チェロ組曲のヴィオラ版の録音は、第1〜3番を既に3年前に発表しており、当盤で完結の運びに。しっかり弓圧をかけた明瞭な発音を基本として、音符ごとに精緻な表現を織り込む。あるいは、ルバートしたい場面も、あえてインテンポで。機動力に勝る楽器の特性を生かした、きびきびとした音楽創りに磨きがかかり、「ヴィオラで弾くこと」の意義が、より明確に示されている。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年8月号より)
【information】
CD『J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ(チェロ)組曲〈Vol.2〉/ヴォルフガング・ヴェルファー』
J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ(チェロ)組曲第4番〜第6番
ヴォルフガング・ヴェルファー(ヴィオラ)
ナミ・レコード
WWCC-7898 ¥2500+税