原ハーゼルシュタイナー麻理子(ヴィオラ) & 上野通明(チェロ) × ダニエル・ゼペック(ヴァイオリン) & オリヴィエ・マロン(チェロ)

俊英&達人が挑む大作&秘作


 トッパンホールの魅力のひとつに、卓抜な審美眼で選ばれた演奏家たちによるオリジナル企画の室内楽がある。「原ハーゼルシュタイナー麻理子(ヴィオラ)& 上野通明(チェロ) × ダニエル・ゼペック(ヴァイオリン)& オリヴィエ・マロン(チェロ)」は、その好例だ。本公演は同ホールに出演を重ねる原と上野を軸にした企画。原は、アントワン・タメスティらに次ぐ世代の旗手として日欧で活躍し、ドイツ・カンマーフィルの客演奏者の経験もある。上野は、2014年のブラームス国際コンクールで優勝後、着実に成長を続ける俊才。室内楽では主奏と助奏のバランスが絶妙な二人だ。彼らの共演者としてオファーを受けたのがゼペック。ドイツ・カンマーフィルのコンサートマスターのほか、アルカント・カルテットやソロで(同ホールでも)活躍しながら、一途に“音楽する”達人だ。そこにシューベルトの弦楽五重奏曲でアルカントQと共演しているマロンが加わる。

 プログラムは、何と前半がバッハ/シトコヴェツキ編の「ゴルトベルク変奏曲」。弦の絡みが独自の妙味をなすこの名編曲は、精緻極まりない場面の連続だけに、二人とゼペックのコラボの成果が注目される。次のゼペック&マロンが奏でるシュルホフの二重奏曲も興味津々。そしてアレンスキーの弦楽四重奏曲第2番が最後に来る。チャイコフスキーを追悼した同曲は、チェロ2本の変則四重奏。それゆえの重層感が比類なく、聖歌等を主題とする音楽はすこぶる美しい。だが生演奏は稀なので、この曲を聴くだけでも足を運ぶ甲斐がある。これは、顔ぶれも演目も実に濃密な、音楽的感興溢れる公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年2月号より)

2019.2/9(土)15:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
http://www.toppanhall.com/