喜寿にちなむコバケンの重量級プログラム
炎のマエストロこと小林研一郎が2017年4月に77歳、喜寿を迎えた。ハンガリー、オランダ、チェコなどの楽団ポストを歴任し欧州でも長いキャリアを誇るが、首都圏の音楽愛好家にとってコバケンは、振り返ると常にそこにいて、いつも熱い演奏を繰り広げる指揮者であったように思う。うんうんうなりながらの気迫の指揮が、深々とした節回しを導く。堂々とした彼らしい芸風にスカっとくるファンも多いはずで、東京に世界のトップ指揮者が続々と進出し若手の台頭も激しいこの時代に、依然としてバリバリの現役で振り続けている事実が、根強い支持を裏書きしている。どこか昭和の香りを湛えた音楽の、ホームグラウンドにいるような安心感は、もはや世代を越えた共通体験と言ってよい。
音楽監督や常任指揮者として長年にわたり共演を重ねてきた日本フィルが、1月定期でこの桂冠名誉指揮者の喜寿をことほぐ。曲目は77歳にちなみブルックナー「交響曲第7番」だ。息の長い旋律を積み上げながら神の世界に至るこの作曲家の創造にあって、とりわけ大自然の雄大さを持つ曲だが、旧知のオケとともにコバケン色に染め上げていくプロセスを愉しみたい。
前半には美貌のヴァイオリニスト、アレクサンドラ・スムが登場し、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」を披露。モスクワ生まれ、オーストリアで学び、パリを拠点に活躍する国際派で、音楽を通じた社会活動にも積極的だ。来日も多く、マエストロとはすでに強い信頼関係で結ばれているという。近年は音楽的にもますます充実し、今後さらに人気が出そうな才媛だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年1月号より)
第697回 東京定期演奏会
2018.1/26(金)19:00、1/27(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp/