メシアン:歌劇《アッシジの聖フランチェスコ》あらすじ

文:柴辻純子(音楽評論家) 読響『月刊オーケストラ』11月号から転載

歌手との稽古場でスコアを広げるカンブルラン

メシアン:歌劇《アッシジの聖フランチェスコ》(演奏会形式/全3幕/仏語上演、日本語字幕付き/全曲日本初演)
作曲:1975~1983年/初演:1983年11月28日、パリ/演奏時間:約5時間半(休憩含)

第1幕 第1景『十字架』
 舞台は13世紀イタリア。フランチェスコと兄弟(修道士)レオーネが歩いている。フランチェスコはレオーネに「完全な歓び」について説く。それは十字架を受け入れること、すなわちキリストへの愛のためには、キリストの十字架での苦難を思い、世の中のあらゆる矛盾や苦しみ、非難に耐えなければならならず、それを甘受することが「完全な歓び」である、という。二人が立ち去った後、巨大な十字架が浮かぶ。

第2景『賛歌』
 早朝のミサでフランチェスコは3人の修道士たちとともに神を賛美し、その創造物をえる(「太陽の賛歌」の一節)。その後ひとり残ったフランチェスコは、神に祈りを捧げ、重い皮膚病患者に出会うことを願い、その人を愛することができるようにしてほしいと神に祈る。

第3景『重い皮膚病患者への接吻』
 フランチェスコはアッシジ近くの療養所を訪れ、病苦から神と世界を呪っている重い皮膚病患者と出会う。初めはこの男の姿に躊躇するが、フランチェスコは彼の近くに座り、慰めの言葉をかける。すると窓辺に天使が現れ(フランチェスコと患者にその姿は見えない)、「神はあなたの心より大きい」と告げる。フランチェスコはこの言葉に勇気づけられ、患者に口づけする。男の病はすぐさま快癒し、男は「奇跡だ!」と叫び、喜んで踊り出す。フランチェスコは、神が自分の心にもたらしてくれた自己克服力と恩恵の大きさに感謝し、フランチェスコは聖フランチェスコとなる。

第2幕 第4景『旅する天使』
 ヴェルナ山の修道院に向かう森の小道を、旅人に姿を変えた天使がやってくる。修道院の扉を猛烈な音でたたくと、兄弟マッセオが扉を開けて天使を招き入れる。天使は兄弟エリアに神の摂理について問いかけるが、エリアは答えるのを拒み、天使を追い出してしまう。再び天使がやってきて同じように扉をたたき、今度は兄弟ベルナルドに同じ問いをする。博学なベルナルドはそれに答え、天使と死後の生について議論する。天使が去った後、ベルナルドとマッセオは、「あれは天使だったのでは……」と顔を見合わせる。

第5景『音楽を奏でる天使』
 天使は聖フランチェスコのもとにも現れる。彼はすぐに気づき、天使は音楽の力と神秘について語りかける。天使の奏でるヴィオール(弦楽器)の音楽は、聖フランチェスコに天上の至福を予感させ、その音色のあまりの美しさに気を失う。修道士たちが次々とやってきて「神父さまの身に何か起こったのでは」と心配するが、やがて聖フランチェスコは目を覚まし、静かに語り始める。
第6景『鳥たちへの説教』
 春のアッシジの森。世界中からたくさんの鳥たちが集まる。鳥たちの言葉を理解できる聖フランチェスコは、兄弟マッセオとともに庭に立ち、鳥たちに説教し祝福を与える。すると鳥たちは声を合わせて一斉に歌い出し、「鳥たちのコンサート」が始まる。

第3幕 第7景『聖痕』
 夜のヴェルナの森。聖フランチェスコが岩場の洞窟にひとりでいると、そこに巨大な十字架が出現する。その十字架から放たれる5本の光線によって、両手と両足と右脇腹が照らされ、キリストと同じ五つの傷を負う。それはキリストの聖痕であり、聖フランチェスコがキリストの受難をわが身に受けることのできる聖人であることを示す神のしるしでもあった。

第8景『死と新生』
 死を前にした聖フランチェスコが横たわり、その周りを修道士たちが取り囲む。聖フランチェスコは自分が愛したすべてのものに別れを告げ、「太陽の賛歌」の最後の一節を歌い、修道士は「詩篇141番」で応える。そこに天使と重い皮膚病患者も現れ、聖フランチェスコを力づける。天使が現れたことで天国が約束された。「主よ、音楽と詩が私を御身のもとに近づかせてくれました……」と最後の言葉を述べて息を引き取り、鐘が盛大に鳴り響く。やがて合唱が復活を賛美し、一条の光が聖フランチェスコが先程まで横たわっていたところを照らし、まばゆいばかりに輝く。

【Information】
読響創立55周年記念
メシアン:歌劇《アッシジの聖フランチェスコ》(全曲日本初演/演奏会形式)

指揮:シルヴァン・カンブルラン
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル

出演
天使:エメーケ・バラート
聖フランチェスコ:ヴァンサン・ル・テクシエ
重い皮膚病を患う人:ペーター・ブロンダー
兄弟レオーネ:フィリップ・アディス*
兄弟マッセオ:エド・ライオン
兄弟エリア:ジャン=ノエル・ブリアン
兄弟ベルナルド:妻屋秀和
兄弟シルヴェストロ:ジョン・ハオ
兄弟ルフィーノ:畠山 茂

*出演を予定していた兄弟レオーネ役のフィリップ・スライ(バリトン)は、体調不良のため出演できなくなりました。代わりに、フィリップ・アディスが出演します。(2017.11.10更新)

11/19(日)、11/26(日)各日14:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/
11/23(木・祝)13:00 びわ湖ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
http://www.biwako-hall.or.jp/

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