ヴァイオリンの小川響子が盟友と届ける近代フランス音楽の精華

©Kosuke Atsumi

 日本では珍しい常設のピアノ三重奏団として活躍する葵トリオから、ヴァイオリンの小川響子、ピアノの秋元孝介が3月、Hakuju Hallの「リクライニング・コンサート」に出演する。公演に向けて、小川に抱負を聞いた。

 「葵トリオとしてミュンヘン国際音楽コンクールで優勝しましたが、その前に行われたリヨン国際室内楽コンクールには、秋元君と一緒に受けに行って第3位をいただきました。それ以降、私のリサイタルでも共演してもらっています。ただ、東京での演奏機会は少なかったこともあり、ぜひ聴いていただきたいコンサートです。同日に2公演あるので、昼と夜で違ったアプローチもできると思います」

 プログラムは日程も考えて、「春」のイメージを取り入れたフランス音楽中心の組み合わせ。

 「ラヴェルの『ヴァイオリンとピアノのためのソナタ』(遺作)はずっと弾きたいと思ってきた作品です。実は大学生時代に初めて行った海外がラヴェルの名を冠した講習会でした。そこで10歳ぐらい上のロシア人のお姉さんたちと一緒にラヴェルの『ピアノ三重奏曲』を演奏したのですが、レジス・パスキエ先生などにたくさんのアイディアをいただきました。これまでドイツ音楽を中心に勉強していて、今でも私たちのトリオの中心ですが、フランス音楽を演奏する機会は少ないので、このHakujuのシリーズで取り組むなら、と今回はフランス音楽を集めてみました」

 ミヨーの「春」、ラヴェル、メシアン初期の名作「主題と変奏」、フランクの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」の4曲で構成される1時間のプログラム。

 「秋元君とフランクのソナタに取り組むのは初めてです。傑作として知られるので、一度は弾きたいと思っていました。第1楽章の3拍子や、第3楽章の自由な音楽の動きをどう表現するかが課題です。ピアノが難しいのも有名ですよね(笑)。でも、秋元君なら大丈夫。彼は弦楽器の響きに合わせてピアノのサウンドを作ることができる人なので、楽しみです」

 2024年4月からは名古屋フィルのコンサートマスターとしても活動を続ける小川。

 「カラヤン・アカデミーに在籍した時に、ある方から『君はコンマス向きだね』と言われたことがあって、かなり意外でしたけれど、コンサートマスターという立場を意識するようになったのはそれ以降のことです。室内楽的な意識を持ってこれからもトライし続けたいです」と結んでくれた。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2025年2月号より)

第177回 リクライニング・コンサート 小川響子(ヴァイオリン) & 秋元孝介(ピアノ)
2025.3/6(木)15:00 19:30 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp