Kazuoki Fujii 1955-2025
日本を代表するピアニスト・作曲家の藤井一興が1月18日、自宅にて糖尿病性腎症のため亡くなった。享年70。
1975年、東京藝術大学在学中にフランス政府給費留学生としてフランスにわたり、パリ国立高等音楽院の作曲科、ピアノ伴奏科、およびエコール・ノルマル音楽院ピアノ科をそれぞれ1等賞を得て卒業。作曲においては、オリヴィエ・メシアンの薫陶を受け大きな影響を受けた。ピアノはその妻イヴォンヌ・ロリオやマリア・クルチオ、ピアノ伴奏をアンリエット・ピュイグ=ロジェに師事。モンツァ国際コンクール第1位、マリア・カナルス国際コンクール第2位はじめ主要コンクールで入賞を重ね、注目を集める。とりわけフランスものには定評があり、ソロや室内楽で多くの録音を残している。ドビュッシー、ラヴェル、フォーレ、デュティユー、メシアンなどのディスクは高い評価を受けた。また、春秋社『フォーレ全集』全5巻の楽譜校訂も手がけた。
年明け1月8日には、豊洲シビックセンターホールで「フォーレ室内楽演奏会」を開催。体調が優れないなか、ゆかりの深い秦はるひ(ピアノ)、浜匡子(ヴァイオリン)、紫園香(フルート)、横坂源(チェロ)とフォーレの作品や自作曲を披露していた。
教育者としても、多くの後進を育成し、東邦音楽大学大学院教授、東邦音楽総合芸術研究所教授、桐朋学園大学特任教授を務めていた。
繊細な音色で柔らかさ、軽やかさを醸し出す卓越したピアニズムが印象深い。日本の音楽界に大きな足跡を残した存在だった。葬儀は2月2日、都内で行われる。