エリソ・ヴィルサラーゼ(ピアノ) & 新日本フィルハーモニー交響楽団

3曲の協奏曲で露わになる真の巨匠性

 歩んできた人生がそのまま投影されたような、強さと風格、そして圧倒的な存在感。エリソ・ヴィルサラーゼがオーケストラと共演する姿からは、そんなことを感じる。
 ジョージア(グルジア)に生まれ、モスクワ音楽院でゲンリフ・ネイガウスやヤコフ・ザークのもと学んだ彼女は、チャイコフスキー国際コンクールやシューマン国際コンクールで入賞し、ヨーロッパを中心に活発な演奏活動を行ってきた。日本では長年、優秀な若手を育てる名教師としての印象が強かったかもしれないが、2014年、11年ぶりに来日リサイタルを行って以来、日本のピアノファンからも、聴いておくべき巨匠の一人として改めて認識され直したといえる。近年は、すみだトリフォニーホールがさまざまな企画で継続的に招聘している。
 今度の企画は、新日本フィルハーモニー交響楽団と3つのピアノ協奏曲を演奏するというもの。指揮は彼女がたびたび共演し、信頼を寄せるアレクサンダー・ルーディンだ。
 曲目はまずモーツァルトの第15番、ベートーヴェンの第2番という、ともに変ロ長調の協奏曲。演奏機会の多くない古典派の名作で、ヴィルサラーゼの研ぎ澄まされたピアニズムをはっきりと聴くことができるだろう。そして、もう1曲はショパンのピアノ協奏曲第1番。ロマン派らしいピアノならではの表現が魅力の作品で、また違った一面を聴かせてくれる。3つの協奏曲を通して、最初から最後まで、彼女はその圧倒的な存在感をステージで放ち続けるに違いない。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2017年11月号より)

2017.11/23(木・祝)15:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 
http://www.triphony.com/

【関連公演】
エリソ・ヴィルサラーゼ&アトリウム弦楽四重奏団
2017.11/28(火)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp/