孤高の名匠が継承するラフマニノフの芸術
ピアノはもちろん、指揮、作曲、編曲なども高度なレベルでこなす名匠として、多くの聴き手や音楽家から尊敬を集めているミハイル・プレトニョフ。リサイタルと協奏曲の双方で深い感銘を残した今年7月に続き、早くも今秋、ピアニストとしての来日が実現する。
プログラムは、オール・ラフマニノフ。この偉大な作曲家&ピアニストを敬愛するプレトニョフは、『ラフマニノフへのオマージュ』(1998年録音)と題したアルバムをドイツ・グラモフォンよりリリースしている。これは、スイスのルツェルンにあるラフマニノフの旧宅で、彼が実際に弾いていたスタインウェイを使用した録音。ラフマニノフ自身がリサイタルでよく弾いていたベートーヴェン、メンデルスゾーン、ショパン、ラフマニノフの自作曲などを並べた1枚だ。
以来、約20年あまり。今回のプログラムはそれと大きく異なり、すべてラフマニノフによる作品だ。プログラムは、ピアノ・ソナタ第1番、前奏曲「鐘」、幻想的小品集(抜粋)、サロン小品集(同)、10の前奏曲(同)、絵画的練習曲集 op.39より第7番。豊かな色彩感と情熱的な表現が存分に味わえる。また、プレトニョフが近年愛用している河合楽器のグランドピアノ「Shigeru Kawai(KAWAI SK-EX)」が紡ぎ出す透明で精密な音色も楽しみだ。
前述のCDの解説文で、「私は、ホロヴィッツやミケランジェリへと続くラフマニノフの伝統を継承するピアニストです」と語っていたプレトニョフ。抜群の音響を誇る浜離宮朝日ホールで行う今回の一夜限りの公演でも、新たな伝説を創り上げることだろう。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
10/17(月)19:00 浜離宮朝日ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
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