アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

《イリス》で露わになるマスカーニの知られざる側面

アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文
アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文
 日本を舞台にしたイタリア・オペラといえば、まっさきに挙げられるのが、プッチーニの《蝶々夫人》。しかし、もう一作、《蝶々夫人》に先駆けて作曲されたのがマスカーニの《イリス(あやめ)》である。
 イタリアの若きカリスマ、アンドレア・バッティストーニがこの《イリス》を東京フィルの10月定期演奏会(演奏会形式 10/16,10/20)でとりあげる。東京フィルは7月にチョン・ミョンフンの指揮で《蝶々夫人》を演奏したばかり。日本イタリア国交150周年を記念して、ふたつのジャポネスク・オペラが演奏会形式で上演されることになる。
 バッティストーニによれば、《イリス》を聴けば、《カヴァレリア・ルスティカーナ》のマスカーニとはまったく別の作曲家を発見することになるという。ここで描かれる日本は想像のなかの夢の国であり、やはり空想上の中国を題材としたプッチーニの《トゥーランドット》のモデルになっているのが《イリス》だと、バッティストーニは語る。
 欧州における東洋趣味が生み出した作品にわたしたち日本人がどう接するか、というのは《蝶々夫人》でも常々議論になるところだが、イマジネーションが生み出した日本を世界中のだれよりも楽しめるのが当の日本人であるはず。上演機会の限られた作品だけに、大きなインパクトを残してくれるのではないだろうか。
 なお、同月、バッティストーニはベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を中心としたプログラムも指揮する(10/19)。オペラとシンフォニーの両輪にわたっての活躍が続く。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

第886回 オーチャード定期演奏会
10/16(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
第105回 東京オペラシティ定期シリーズ
10/19(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第887回 サントリー定期シリーズ
10/20(木)19:00 サントリーホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp