福間洸太朗(ピアノ)

決めては“コン・フォーコ”

©Marc Bouhiron
©Marc Bouhiron

 福間洸太朗のリサイタル・プログラムはいつも創意にあふれ、聴くと新しい発見をもたらしてくれる。
 最近はフィギュアスケートやバレエとのコラボレーションでも活躍し、ピアノファン以外からも広く注目を集める彼。10月17日夜、ショパンの命日に行うサントリーホール ブルーローズでのオール・ショパン・リサイタルが即日完売したため、10月27日に紀尾井ホールで同プログラムによる追加公演が決定した。
「昨年スタートした、モーツァルト、シューベルト、ベートーヴェンをとりあげる『三大楽聖のキセキ』シリーズのために会場の空きを調べたら、偶然ショパンの命日だったのです。それならショパンも弾きたいと、『三大楽聖』は昼公演とし、夜公演でオール・ショパンを演奏することにしたのです。9月に京都岡崎音楽祭『OKAZAKI LOOPS』のオープニングで、バレエダンサーの首藤康之さんらと共演し、ショパン『24のプレリュード』の抜粋を演奏するので、この機会に全部勉強してリサイタルで取り上げたいと思いました。そこからプログラムを組み立てていったのです」
 プログラムは単に好きな曲を並べるのではなく、そこに意味やストーリーを持たせたいというのが福間の考えだ。そこでひらめいた今回のテーマは「コン・フォーコ」。
「“熱烈に、火をもって”という曲想を表す言葉です。『24のプレリュード』の楽譜を眺めていたら、第16番でこれが使われていました。24曲中、激しい曲想で“アパッショナート”はよく出てくるのですが、“コン・フォーコ”は1回しか使われていません。そこにはショパンの特別な想いが込められているのではないかと…。後期作品ではほとんど見られず、ショパンが激動の人生を過ごしたポーランドを離れて10年ほどの間に書かれた作品でしばしば登場します。例えばバラード第1番、第2番、エチュードではop.10-4、op.10-12『革命』で使われています」
 名曲「24のプレリュード」に臨むにあたって、福間ならではの解釈を届けたいという想いがある。
「“コン・フォーコ”で書かれた第16番が、24曲の中で一つの区切りになっているのではないかと思います。そこに向かってどう音楽が進んでいくのか。そう思って聴いてみると、有名な『雨だれ』や第7番の聴こえ方も変わってくるはずです。もちろん、そのようなことは考えずそのまま聴いていただくのも良いですが、いつもとは違った部分に注目することで新しいおもしろさを見つけていただけたら嬉しいですね」
 福間はリサイタル前になると、ブログなどで自ら執筆した曲目解説を公開する。「2時間の演奏会をいかに楽しんでもらうか」という想いから、多忙な中でもこれを続けているそうだ。実際、これを読んでから演奏会に出かけるとおもしろさが倍増する。今度の公演でも、ぜひチェックしてから出かけてほしい。
取材・文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2016年8月号から)

全4回リサイタルシリーズ「三大楽聖のキセキ」Vol.2〜幻想〜
10/17(月)15:00 サントリーホール ブルーローズ(小)(サンライズプロモーション東京0570-00-3337)
「コン・フォーコ」オール・ショパン・リサイタル
10/17(月)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)(完売)
10/27(木)19:00 紀尾井ホール(サンライズプロモーション東京0570-00-3337)
10/29(土)13:00 いずみホール(キョードーインフォメーション0570-200-888)

福間洸太朗公式ウェブサイト
http://www.kotarofukuma.com