“ショパンコンクール”という世界
コンテスタントが語る最高峰コンクールの実像 Vol.2

浜離宮

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INTERVIEW エヴァ・ゲヴォルギヤン

 2021年の第18回ショパン国際ピアノコンクールにおいて、最年少ファイナリストに輝いたエヴァ・ゲヴォルギヤン。17歳(当時)とは思えないほど円熟した歌心にあふれ、堂々とした演奏に驚いた方も多いことだろう。コンクール後は世界各地をコンサートしてまわる活躍を見せている彼女に、ショパンコンクールでの体験を振り返ってもらった。

©Wojciech Grzedzinski / The Fryderyk Chopin Institute

テレビで見た憧れの舞台

—— ジュニア部門ではない、一般のコンクールへの出場はショパンコンクールがほぼ初めてだったそうですね。エヴァさんにとってショパンコンクールはひとつの大きな目標だったのでしょうか?

 12歳で出場したスペインのコンクールが、大人と同じ大会への参加としては初めてになりますが、国際的に大きな規模のコンクールではショパンコンクールが最初でした。
 テレビでショパンコンクールのファイナルを両親と見た11歳の頃をよく憶えていて。実際にワルシャワのフィルハーモニーホールのステージに立ったとき、「ああ、テレビで見たあの場面に今、自分がいるんだ」という感動がありました。

—— 初めてのチャレンジでファイナルまで進んで、ご自身もびっくりしたのでは?

 ショパンコンクールは期間がとても長くて、10月1日にワルシャワ入りしてからファイナルまで20日間近くありました。第2ラウンド、第3ラウンドに進めたときもハッピーではありましたが、だんだん現実感がなくなっていって。最後はただもう音楽を演奏したいという気持ちだけが残っているという状況でした。

—— ファイナルの協奏曲はとてもドラマティックな演奏で、楽章が進むにつれて没入していく様子がよくわかりました。

 映像を観た方々に「指が震えていたね」とよく言われるのですが、緊張していたからというより、感動していたからと言ったほうがよいかもしれません。もちろんファイナルのステージに出ることにはプレッシャーも感じていましたが、それよりも、とにかく気持ちが高まっていたのです。

©Darek Golik / The Fryderyk Chopin Institute
©Wojciech Grzedzinski / The Fryderyk Chopin Institute

ポーランド国民のショパン愛を実感

—— 多くのコンクールを経験してきたエヴァさんから見た、ショパン・コンクールならではの特徴はどんなところですか?

 やはり世界的な注目度も高いだけあって、“Great Great Event”であることを、実際に出場してみて感じました。すべての人たちのために弾かなければならないという雰囲気がすごくあるんですね。
 ポーランドの人たちのあたたかなホスピタリティも心に残っています。彼らがいかにショパンを愛し、音楽を愛し、故郷を愛しているか、いかにコンクールを大事にしているかを、肌で感じることができました。

—— 2021年のショパンコンクールは個性豊かなコンテスタントたちが揃っていましたが、彼らとの交流はありましたか?

 ショパンコンクール以前から、あちこちのコンクールで知り合っていたので、また会ったねという感じでした。小林愛実さんとはいまだに連絡をとりあったりしています。 

前回大会の結果発表にて。右から二人目がエヴァ・ゲヴォルギヤンさん。

—— ショパンコンクールによってエヴァさんのピアニスト人生は大きく変わったと思うのですが、今後もコンクールは受けますか?

 たしかにショパンコンクールを通して多くの素晴らしい人との出会いがありましたし、私の人生にとって非常に大きな意味を持つ出来事でした。ショパンコンクールに限らず、新しい出会いをもたらしてくれるのがコンクールという場だと思います。
 そういった経験を経て、今の自分はもっと多くのステージを経験し、レパートリーを増やしていくフェーズに入っていると認識しています。ですからもう、コンクールはいいかなと。

—— レパートリーも順調に広げていらっしゃいますが、この先、どのような展望をお持ちですか?

 ピアニストにとって基本となるバッハとベートーヴェンをしっかり学びつつ、毎年新しい作品に挑戦して、幅広くいろいろな音楽を吸収していきたいと思っています。

—— モスクワ音楽院に在籍しながら、スペインのソフィア王妃高等音楽院でも研鑽を積みつつ、リサイタルやオーケストラとの共演で世界中を駆けめぐるお忙しい日々を送っていらっしゃいます。心身のコンディションを整えるコツはありますか?

 できるだけ身体を動かすようにはしています。やはり長時間の飛行機での移動がしんどいですよね。フライトの最中も席を立って軽いエクササイズをしたりしています。あとは、あまりにも忙しい日々が続いたら、少しまとまった休暇をとれるようスケジュールを調整したり。

©Angelina Golub

—— 最後にもうひとつだけ。エヴァさんのトレードマークでもある美しい髪は、どのようにお手入れされているのでしょう?

 ただ洗って、ブラッシングするだけですよ。父がアルメニア人なのですが、アルメニアの人たちはこういうしっかりとした髪質なんです。ただ、彼らは黒髪なのですが、色に関してはロシア人の母の血を受け継ぎました。両方のDNAが混ざった髪なんです。

—— ありがとうございます。今後のご活躍をますます楽しみにしています!

取材・文:原典子


エヴァ・ゲヴォルギヤン ピアノ・リサイタル
2025.7/31(木)19:00 浜離宮朝日ホール

8/3(日)14:00 神戸朝日ホール
曲目
ショパン:幻想曲 op.49、ワルツ第3番 op.34-2、同第7番 op.64-2、練習曲集 op.10より第3番「別れの曲」~第6番、第11番、第12番「革命」
シューマン:謝肉祭 op.9
ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」op.39より第1曲~第3曲、第6曲、第9曲
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990(7/31)
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/
問:フェスティバルホール チケットセンター06-6231-2221(8/3)
https://www.kobe-asahihall.jp