
右:神尾真由子 ©Makoto Kamiya
東京フィルハーモニー交響楽団の7月定期演奏会では、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と交響曲第6番「悲愴」という、名曲中の名曲が並ぶ。
指揮は東京フィルのアソシエイト・コンダクター、チョン・ミン。韓国や欧州で着実にキャリアを積み、今伸び盛りの指揮者である。過去2回の定期(2019年、20年)は急遽の代役だったが、今回は準備を重ねての登場となる。22年には「午後のコンサート」も指揮した。
2019年の定期でチャイコフスキーの交響曲第5番を指揮した際は、歌わせる場面はたっぷりと歌わせ、畳みかける箇所はメリハリを利かせ、クライマックスは大きな構えで堂々と進めた。チョン・ミンは、韓国国立オペラやイタリアのテアトロ・マッシモなどのオペラハウスでドラマティックな表現力を培ってきた。こうした経験は、「悲愴」のような内的ドラマが濃厚な作品において存分に発揮されるだろう。
ヴァイオリン協奏曲のソリスト、神尾真由子は、情熱と集中力にあふれた演奏で知られる。チャイコフスキー国際コンクール優勝後、国際的な舞台で経験を積んできた彼女のパフォーマンスは、聴き手の心に直接語りかける濃密な表現と、正確無比な技巧の冴えが理想的なバランスで融合している点が特長だ。
そして、ふたりを支える東京フィルの実力も見逃せない。シンフォニーオーケストラと劇場オーケストラの両機能を併せ持つ高い技術と表現力は、チョン・ミンの劇的な構成力に富んだ指揮と神尾真由子の情熱的な演奏とともに、名曲に新たな光を当てるだろう。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2025年7月号より)
チョン・ミン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1020回 サントリー定期シリーズ
2025.7/17(木)19:00 サントリーホール
第172回 東京オペラシティ定期シリーズ
7/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1021回 オーチャード定期演奏会
7/20(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp

長谷川京介 Kyosuke Hasegawa
ソニー・ミュージックにてクラシックCDの企画・制作を担当するプロデューサーとして勤務。
退職後は音楽評論家として活動し、「ぶらあぼ」「音楽の友」「毎日クラシックナビ・速リポ」などにコンサート評や記事を執筆。
コンサート・プログラムやCD解説の執筆も手がける。
ミュージック・ペンクラブ音楽賞選考委員。個人ブログ「ベイのコンサート日記」は年間40万回を超えるアクセスを集めている。