ダーヴィト・アフカム&N響が真夏に贈るドイツ・ロマン派の夕べ

左:ダーヴィト・アフカム ©Gisela Schenker
右:マルティン・ヘルムヒェン ©Ole Schwarz

 定期演奏会がお休みの「夏」に特別のコンサートが用意された。N響「夏」2025はドイツ・ロマン派の名曲2曲を並べ、同世代のヨーロッパ注目のアーティストふたりがその音楽性を示す。

 指揮はダーヴィト・アフカム(1983年、フライブルク生まれ)。現在はスペイン国立管弦楽団のチーフ・コンダクター兼芸術監督として活躍するほか、ドレスデン国立歌劇場などでのオペラ公演でも実力を発揮している。ソリストにはピアノのマルティン・ヘルムヒェン(1982年、ベルリン生まれ)を起用。クララ・ハスキル国際ピアノコンクールの優勝で一躍注目を集め、今シーズンはソロ活動のほか、フランクフルト歌劇場管弦楽団のアーティスト・イン・レジデンスも務めている。フランク・ペーター・ツィンマーマンとのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏でも知られ、これからのドイツを担うピアニストとして着実に歩みを進めている。

 プログラムは、ふたりが共演するシューマンのピアノ協奏曲、そしてブラームスの交響曲第1番という折り紙付きの傑作2曲である。ヘルムヒェンの知的な解釈と的確なコントロールによる音色で、シューマンの内面的な魅力も感じることができるはずだし、ブラームスではアフカムのスケールの大きな音楽作りを体感できるだろう。

 コンサートは7月18日金曜の夜だが、おそらくすでに大気は暑熱を帯びている時期。外の暑さをいったんリセットして、ふたりとN響の作る音の響きに身を委ねたい。

文:片桐卓也

(ぶらあぼ2025年7月号より)

N響「夏」2025
2025.7/18(金)19:00 NHKホール
問:N響ガイド 0570-02-9502 
https://www.nhkso.or.jp

他公演 
7/20(日) 愛媛県県民文化会館(ハローダイヤル050-5541-8600)
7/21(月・祝) 上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)(同上)


片桐卓也 Takuya Katagiri

1956年8月、福島県生まれ。早稲田大学在学中からフリーランスとして仕事を始め、映画、旅、自動車などの雑誌に関わる。1990年ごろから本格的にクラシック音楽関係の取材を始め、音楽雑誌に寄稿している。他に、コンサートの曲目解説、録音のライナーノーツの執筆なども多数。余裕があれば、バロック期のオペラを聴きにヨーロッパへ出かけている。趣味は都会の廃墟探訪。