【SACD】シベリウス:交響曲第2番&アンダンテ・フェスティーヴォ/村川千秋&山響

 じつに堂々と奏でられたシベリウスだ。東北最初のプロのオーケストラ、山形交響楽団を創設し、地域に音楽文化を根付かせる地道な活動を行いつつ、シベリウス演奏の伝統を築いてきた村川千秋。91歳だった指揮者による生涯最後となったシンフォニー(第2番)演奏のライブ録音は、一切のハッタリもなければ、スペクタクルだってない。ひなびた音色でしっとりと旋律を受け渡しつつ、悠然とした流れを作り出す。音楽そのものを信用しきっている感覚を指揮者だけでなく、オーケストラも共有しているこの演奏には、当コンビが歩んできた長い歴史がそのまま投影されているかのようだ。
文;鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年1月号より)

【information】
SACD『シベリウス:交響曲第2番&アンダンテ・フェスティーヴォ/村川千秋&山響』

シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ、交響曲第2番

村川千秋(指揮)
山形交響楽団

収録:2024年8月、やまぎん県民ホール(ライブ)
妙音舎
MYCL-00070 ¥3740(税込)


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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