エリザベート王妃国際コンクールで久末航が第2位、亀井聖矢が第5位

KAWAI

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優勝はオランダのニコラ・メーウセン

 ブリュッセルのパレ・デ・ボザールで開催されているエリザベート王妃国際コンクール(Concours Reine Elisabeth)は、現地時間の5月31日、6日間にわたるファイナルの全審査が終了。日付が変わった深夜に表彰式が行われ、いずれも31日の最終日に登場した久末航が第2位、亀井聖矢が第5位にそれぞれ入賞し、2021年の前回大会に続く日本からの複数入賞となった。第1位はオランダのニコラ・メーウセン。第3位にはベルギーのヴァレール・ビュルノンが入賞し、地元出身の若者の快挙に会場は大いに沸いた。

第1位 Nikola Meeuwsen ©Alexandre de Terwangne

◎エリザベート王妃国際コンクール ピアノ部門最終結果
第1位 Nikola Meeuwsen(オランダ 2002)
第2位 Wataru Hisasue 久末航(日本 1994)
第3位 Valère Burnon(ベルギー 1998)
第4位 Arthur Hinnewinkel(フランス 2000)
第5位 Masaya Kamei 亀井聖矢(日本 2001)
第6位 Sergey Tanin(ロシア 1995)
入選 Rachel Breen(アメリカ 1996)
Mirabelle Kajenjeri(フランス 1998)
Shiori Kuwahara 桑原志織(日本 1995)
Nathalia Milstein(フランス 1995)
Jiaxin Min(中国 1996)
Yuki Yoshimi 吉見友貴(日本 2000)

 ファイナルは、大野和士指揮ブリュッセル・フィルハーモニックとの共演による協奏曲の課題。クリス・デフォールトによるピアノと管弦楽のための新作「Music for the Heart」とそれぞれの出場者が選んだ作品の2曲を、12名のコンテスタントたちが個性豊かに演奏。前者では、コンテスタントにより様々な解釈が聴かれた。途中、ビュルノンのステージ直後に活動家が現れる想定外のハプニングもあったが、稀に見るハイレベルな闘いに連日客席からは惜しみない拍手がおくられた。

 優勝したニコラ・メーウセンは、2002年ハーグ出身。イモラ国際ピアノアカデミーでエンリコ・パーチェらに、エリザベート王妃音楽礼拝堂でフランク・ブラレイやAvedis Kouyoumdjianに師事。2024年にアムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウでソロ・デビュー。オランダ室内管やシンフォニア・ヴァルソヴィアなどオーケストラとの共演も多く、ジャニーヌ・ヤンセン、オーギュスタン・デュメイら著名な音楽家とも共演するなど、すでに国際的なキャリアを築いている。ファイナルでは、プロコフィエフの協奏曲第2番で鮮やかなタッチと抜群のリズム感をみせた。

第2位 Wataru Hisasue ©Thomas Léonard

 見事、第2位入賞を果たした久末航は、滋賀県大津市出身の30歳。現在はベルリンを拠点としている。フライブルク音楽大学、パリ国立高等音楽院、べルリン芸術大学にて研鑽を積み、クラウス・ヘルヴィヒらに師事。バイエルン放送響、シュトゥットガルト室内管、都響、京響など国内外のオーケストラとの共演多数。ミュンヘン国際音楽コンクール第3位(2017)、ゲザ・アンダ国際ピアノコンクール特別賞(ベートーヴェン賞およびリスト・バルトーク賞)受賞(2024)などの入賞歴がある。ファイナルでは、全出場者の最後に登場し、4楽章構成をもつブラームスの大作、協奏曲第2番をダイナミックかつ重量感たっぷりに弾き切った。

 第3位のヴァレール・ビュルノンは、1998年ベルギー北部のマルシュ=アン=ファメンヌ出身。リエージュ王立音楽院、ケルン音楽大学を経て、2022年からはエリザベート王妃音楽礼拝堂のアーティスト・イン・レジデンスを務める一方、イモラ国際ピアノアカデミーでも研鑽を積む。母校のリエージュ王立音楽院では室内楽を教えている。上位入賞で、見事、地元関係者や音楽ファンの期待に応える結果となった。

第3位 Valère Burnon ©Thomas Léonard

 第5位に入賞した亀井聖矢は、2001年愛知県出身。現在は独カールスルーエ音楽大学で、今回の審査員でもある児玉桃に師事し、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースでも研鑽を積んでいる。2022年、ロン=ティボー・コンクールで優勝し国際的にも注目を集める。ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル等の著名な音楽祭からも招聘されるなど、活動の幅を国内外に拡げている。ファイナルでは、得意のサン=サーンスの協奏曲第5番「エジプト風」を披露し、重めの作品が続くなか、一服の清涼剤のように爽やかな空気でパレ・デ・ボザールを包んだ。

第5位 Masaya Kamei ©Thomas Léonard

 12名中4名がファイナルに残り、四者四様の個性で世界のピアノファンに存在感を示した日本勢。トップバッターとして演奏したプロコフィエフの協奏曲第3番で切れ味鋭いリズムと音色の美しさが際立った吉見友貴、ブラームスの協奏曲第2番を選択し、持ち前の力強いタッチで濃厚なロマンティシズムを壮大なスケールで聴かせた桑原志織。それぞれの持ち味を充分に出し切った演奏が強く印象に残った。緊張のステージのなか、特に日本のコンテスタントたちにとっては、指揮者・大野和士の存在は心強いものであっただろう。

Yuki Yoshimi ©Alexandre de Terwangne
Shiori Kuwahara ©Alexandre de Terwangne

 ファイナルの演奏前に1週間以上の隔離生活も経験したファイナリストたちだが、このあとは、入賞者によるコンサートが6月4日以降始まり、ブリュッセル以外のベルギー国内の都市でも開催される。長丁場で間違いなく“世界で最も過酷なコンクール”は、現地時間6月11日にすべての日程を終えることになる。

文:編集部

Queen Elisabeth Competition
https://queenelisabethcompetition.be/en/