フレーズの作りから、ハーモニーやバランスの組み立て、すべてが丁寧に形作られたブルックナーだ。ノットの音楽監督としての総決算となる演奏の一つとなるだろう。以前はもっとサバサバと進行していたノットと東響のブルックナーだが、今回は全体としてしなやかに、音楽の縦と横の綾を紡いでいく。アダージョ楽章での主題間の描き分けも濃厚だ。冒頭楽章の最後のクライマックスでは、均衡が危うくなるほどにティンパニが激しいトレモロを響かせる。その峻厳さによってコーダを導くといった筋道なのだろう。とはいえ、その強弱の推移だって丹念なまでにデザインされているのだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年6月号より)
【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第7番/ジョナサン・ノット&東響』
ブルックナー:交響曲第7番(ノーヴァク版)
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
収録:2024年7月、サントリーホール(ライブ)
OVCL-00877 ¥3850(税込)