
右:村田夏帆
札幌のクリスマスの恒例イベントとなった、札幌コンサートホール Kitaraで開催される「Kitaraのクリスマス」。クリスマスコンサートらしく親しみやすく華やかな曲が並びながら、愛好家も唸らせるコアな内容も持ち合わせる絶妙なプログラムで、幅広く楽しめる好企画となっている。
オーケストラはもちろん札幌交響楽団。札幌で生まれ育った横山奏が指揮者を務める。2018年東京国際音楽コンクール〈指揮〉(現・東京国際指揮者コンクール)第2位と聴衆賞受賞の俊才も、各地で着実にキャリアを積み重ね、いまや中堅の域に入りつつある。その充実ぶりも示されるはずだ。
横山の考案したプログラムがまた興味深い。全体としてはアメリカ・プロだが、“隠れフランス・プロ”というエッセンスも含まれている。最初にガーシュウィン「パリのアメリカ人」で、その切り口を提示しながら、ジャジーなムードで楽しく開幕。続いて、アメリカのワックスマンがフランスのビゼー作品を元にした「カルメン幻想曲」、ジャズを取り入れるほどアメリカ音楽を好んだラヴェルの「ツィガーヌ」のヴァイオリン作品2曲。そして、18世紀フランスのヴォルテールの小説を原作とする、バーンスタインの《キャンディード》から、有名な「序曲」と名場面が並ぶ「組曲」で、明るく楽しく、最後は感動的に盛り上がる。演奏会最後は、〈もろびとこぞりて〉などおなじみの旋律がメドレーになった、アメリカのアンダーソン「クリスマス・フェスティバル」で、聖夜のムードを深める。見事に筋の通った、しかも無心に聴いても楽しめる、すてきなプログラムではないか。札響の多彩な表現力も存分に発揮されるはず。
2つのヴァイオリン曲でソリストを務める、村田夏帆も大注目だ。東京音楽大学付属高校で特別特待奨学生3年生という若さながら、瑞々しい音色と技巧に加えて、年齢を感じさせない成熟度もみせる、期待の俊才だ。札幌は彼女の母親の出身地という縁があり、さらに指揮の横山とは2年前に共演済みで信頼関係があるとのことで、さまざまな側面からも期待が募る。
文:林昌英

Kitaraのクリスマス
2025.12/20(土)15:00 札幌コンサートホール Kitara
出演
横山奏(指揮) 札幌交響楽団
村田夏帆(ヴァイオリン)*
プログラム
ガーシュウィン:パリのアメリカ人
ラヴェル:ツィガーヌ*
ワックスマン:カルメン幻想曲*
バーンスタイン:
歌劇《キャンディード》序曲
組曲「キャンディード」
アンダーソン:クリスマス・フェスティバル
問:Kitaraチケットセンター011-520-1234
https://www.kitara-sapporo.or.jp


