年末年始に観たいクラシック無料動画特集 2025

災害や戦争が続き、先行きの見えない日々が続いた年もあと少し。年末年始はゆっくりという方のために、今年も編集部オススメの最新無料動画を集めました。視聴期限があるものもありますので、チェックはお早めに。

[12/31まで] Holiday Gift: Maria João Pires’ Stunning 2024 Festival Performance

この秋、来日時の会見では音楽への真摯な向き合い方をあらためて言葉でも示してくれたマリア・ジョアン・ピレシュ(ピリス)。今年の4月27日、アメリカのGilmore Piano Festivalでのリサイタルでは、モーツァルトのソナタとドビュッシー「ベルガマスク組曲」「ピアノのために」を。クリアで研ぎ澄まされたタッチは健在。ドビュッシーの素朴な味わいも格別。

Thomas Hengelbrock and Orchestre de chambre de Paris – Paris Pantheon

フォーレ没後100年イヤーだった2024年の9月7日、パリのパンテオンで行われた公演。手兵バルタザール・ノイマン合唱団の歌声は、天上から降り注ぐかのよう。ソプラノはカタリナ・コンラディ。バリトン・ソロは、今年、東京・春・音楽祭で初来日したコンスタンティン・クリンメル。パンテオン内部の美しさも格別で、映像としても楽しめます。最終曲 In paradisum を振り終わったあとの、ひとときの静寂もいい。カップリングは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番を管弦楽版で。【冒頭にCMあり】

BLOMSTEDT CONDUCTS BERWALD AND BRAHMS

今年9月12日、ロイヤル・ストックホルム・フィルの本拠地ストックホルム・コンサートホール Konserthusetでの演奏会。興味深いのは、スウェーデン出身でウィーンでも活躍したフランツ・ベルワルドFranz Berwald (1796-1868)の2作品。「ノルウェーの山の思い出」と交響曲第2番ニ長調「気まぐれな交響曲」(Sinfonie capricieuse)が演奏される。メインはブラームスの交響曲第1番。動画中盤には、ブロムシュテットのロングインタビューもあり、(何を言っているのかわからないけれど)スウェーデン語を話している姿も貴重。

Off to New Shores I Nicola Matteis – an Italian in London I Duo Minoriten

フランス在住のバロック・ヴァイオリン奏者 出口実祈とオランダ在住のリュート奏者 上田朝子によるユニット「みのりてんデュオ(Duo Minoriten)」が近年ヨーロッパで活躍の場を拡げている。2024年5月、独ヴァイセンブルン城財団の支援を受け、10日間にわたりアーティスト・イン・レジデンスを務めたときの模様。OFF TO NEW SHORESと題し、イタリアに生まれロンドンに渡り活躍したニコラ・マッテイスの作品を中心に、二人が最も得意な17世紀のレパートリーで、自由で生き生きとしたアンサンブルを繰り広げる(上田はテオルボとバロックギター)。1月11日に同様のプログラムで都内で公演あり。
余談ながら、マッテイスは、イザベル・ファウストも先日の来日時にアンコールで演奏していたけれど、日本でもっと知られてほしい!

Inaugural Organ Concert of the Cathedral Gallery Organ – Olivier Latry

先日、復活を遂げたパリのノートルダム大聖堂。その正オルガニストの座にあるのが、世界最高のオルガニストの一人、オリヴィエ・ラトリー。米ヴァージニア州リッチモンドのThe Cathedral of the Sacred Heartで10月30日に行われたコンサートのライブ映像(全編暗譜)。アレクサンドル・ギルマン(1837–1911)のオルガン・ソナタ第1番最終楽章(24:43〜)のエンディングがめちゃくちゃカッコイイ!お客さんも拍手喝采。ルイ・ヴィエルネ(1870-1937)の「ウェストミンスターの鐘」ではおなじみのキンコンカンコンの鐘の音が聞こえてくる。終盤には圧巻のインプロヴィゼーションもあり。

Timpani in the Classical Period | The Evolution of the Timpani: Part 3

イギリスのピリオド楽器オーケストラ「エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団」の首席ティンパニ奏者、エイドリアン・ベンディング Adrian Bending が古典派期のティンパニについて解説した動画。演奏中に行われるチューニングにどのくらいの時間がかかっていたか。また、ベートーヴェンのティンパニの使い方がいかに巧みだったか、という話も実例とともに説明されていて面白い。

Teodor Currentzis conducts Britten’s War Requiem

昨今の政治情勢から難しい立場に置かれているテオドール・クルレンツィス。2023/24シーズンをもってSWR交響楽団の首席指揮者を退任したが、その最後に選んだのがブリテン「戦争レクイエム」。このシュトゥットガルトでのコンサート(6/11)の翌日には、同曲をウィーン芸術週間でも振る予定だったが、音楽祭の別公演に出演予定だったウクライナ出身のオクサーナ・リーニフの抗議によりキャンセルとなった。1962年に書かれたこのレクイエムに、フォーレのような慰めはないけれど、不安を掻き立てるようなハーモニーと弔いの鐘の音に始まる音楽を聴き進めていくと、これこそが戦争の世紀であった20世紀を象徴する作品だったのかもしれないという気がしてくる。ソリストはマティアス・ゲルネほか。

Gesualdo Six -Live from Wigmore Hall

先日、初来日して圧倒的なハーモニーを聴かせてくれたイギリスの新世代アカペラ・グループ「ジェズアルド・シックス」。他の追随を許さないその見事なアンサンブル力には驚かされた。12月20日、ロンドンのウィグモアホールで行われたコンサートでは、パレストリーナやラッススなどルネサンスから、日本公演でも演奏したペルトやリーダーのオワイン・パークによる自作曲まで、幅広いプログラムを披露。パークの重低音バスが心地よい。

Brad Mehldau Trio – Nancy Jazz Pulsations – ARTE Concert

世界のジャズシーンをリードするピアニストの一人、ブラッド・メルドーがフランスのNancy Jazz Pulsationsにベース、ドラムとのトリオで出演した時のライブ映像(10月16日)。リリカルかつスリリングなそのプレイは唯一無二。ちなみに、シームレスにジャンルを超えるブラッドは、今年「After Bach II」というアルバムをリリース。平均律クラヴィーア曲集のプレリュードやフーガ、パルティータからの数曲と、それらにインスパイアされた自作曲は絶品。こちらもぜひ。