「クロッシングな出会いを」〜開館30周年の彩の国さいたま芸術劇場が2024年度ラインナップを発表

大ホール客席をバックにして 近藤良平芸術監督

 彩の国さいたま芸術劇場が、開館30周年にあたる2024年度のラインナップを発表した。3月19日に行われた会見には、近藤良平芸術監督、同劇場と埼玉会館を運営する埼玉県芸術文化振興財団の加藤容一理事長が登壇した。

 大改修工事により約1年半におよぶ休館を経て、3月1日にリニューアルオープンした彩の国さいたま芸術劇場。内覧会には地域住民をはじめ約3000人が来館し、加藤理事長は「新しい方とも繋がりはじめているという期待感をもてた」と語る。

 会見冒頭に流れた映像では、これまで同劇場で行われた公演の一部チラシを並べて30年の歩みを足早に振り返った。近藤は「開館から30年、結構いろいろなことをやっています。2024年のラインナップは30周年を売りにしたものではありませんが、音楽・演劇・ダンスともに多岐にわたる充実した内容で、全部観たいですし、全部観ていただきたい」と自信をのぞかせる。

会見冒頭の映像で流れた公演チラシの一部
左:近藤良平芸術監督 右:加藤容一理事長

 2024年度のラインナップは、新しいプロジェクトの始動に注目が集まる。まず近藤が22年の監督就任時からあたためてきた企画の一つ、新シアターグループ「カンパニー・グランデ」だ。年齢や国籍、プロ・アマ、障がいの有無など垣根を超え、「表現したいという志があれば誰でも応募できる」100人規模を想定したカンパニーだ。「10年、20年と続く大きな夢を含んだ企画だと思っています。ジャンルクロスの実験の場としても活用したり、新しい劇場の使い方、楽しみ方を見つけ出せると思い、立ち上げました。年間を通してワークショップを行い、遊びながら作品をつくっていくのが理想です」。来年3月にはその成果発表となる作品を上演する。

 そして「さいたま=シェイクスピア」というイメージを築いた「シェイクスピア・シリーズ」の「2nd」シーズンが始まる。蜷川幸雄から同シリーズ芸術監督のバトンを引き継いだ吉田鋼太郎のもと、5月に開幕する吉田演出の『ハムレット』を皮切りに「“新”シェイクスピア・シリーズ」のスタートにも期待が高まる。

 「幅広い世代に向けたプログラム」では、より劇場を身近に感じてほしいと様々な企画が予定されている。その一例として、高校生を中心とした若い観客から大人までが楽しめる吉田演出『夏の夜の夢』を開館30周年特別企画として上演。18歳以下を無料で招待する。オープンスペース「光の庭」では、休館中に実施した「埼玉回遊」(近藤が県内各地を巡り、多彩な文化を探求するプロジェクト)で出会ったチェンバロのコンサートや、子ども向けのディスコなども計画されているという。

 アーティストとの新しい出会いを大切にする「次世代の表現者の発掘・育成」では、近藤が発案するダンスの育成企画「ダンス・リダイレクション」のほか、音楽では、若手アーティストが異なる2つのスタイルでプログラムを組む「エトワール・シリーズ プラス」にチェリストの佐藤晴真が登場する。また新進気鋭の作曲家・坂東祐大とは音楽における新しい表現を探っていく。

 音楽やダンスでは「世界の最前線を楽しむ」アーティストたちを招聘。ダンスは、現代フランス・ダンスを代表する振付家、クリスチャン・リゾーとラシッド・ウランダンの代表作が、それぞれ10月に登場。音楽では巨匠サー・アンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタルや、近藤が「僕の中ではシンディ・ローパーのようなイメージ」と語る鬼才パトリツィア・コパチンスカヤが、アーティスティック・パートナーを務めるカメラータ・ベルンと共演する。

 いずれも充実の公演が企画されているが、どの公演を観にいけばと悩む方には、劇場オリジナルの“おすすめ公演診断”が用意された。そこから同劇場が2024年度に開催する公演に抽選で招待する「kitemite THEATER(キテミテ・シアター)」企画(春・秋2シーズンで展開)の申し込みも可能だ。
 
 さいたま・与野本町の地から様々な“出会い”を生み出してきた同劇場だが、近藤は30周年もあくまで「通常運転で」と強調する。
「県との繋がり、地域との繋がりを感じる2年でした。コロナ禍でずっと制限があるなか一つひとつやってきましたが、その縛りがひとつ取れた。リニューアルオープンして見えないところでも機能が動き出し、いろんな知恵を働かせて活気ある新しい劇場を作っていきたい」

彩の国さいたま芸術劇場
https://www.saf.or.jp/arthall/

https://www.saf.or.jp/30th/
埼玉県芸術文化振興財団
https://www.saf.or.jp

*2024年度ラインナップの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。