名古屋フィルハーモニー交響楽団
川瀬賢太郎音楽監督による新シーズン ラインナップ発表会見

左より:小出稚子、川瀬賢太郎、犬塚力

 9月22日、名古屋市音楽プラザで名古屋フィルハーモニー交響楽団の2024.4-2025.3シーズン ラインナップ発表会見が行われ、同楽団理事長の犬塚力、音楽監督の川瀬賢太郎、コンポーザー・イン・レジデンスを務める小出稚子らが出席した。

 来季の定期演奏会のテーマは「喜怒哀楽」。演奏会が、人間だれしもが持つ感情と音楽との接点となり、作曲家の感情についても考える機会になってほしいという思いが込められている。
 今季と同じく11のプログラムが用意され、各回2公演ずつ、全22公演が愛知県芸術劇場 コンサートホールで開催される。

 2011年から同楽団でポストを持ち、今年4月に第6代音楽監督に就任した川瀬賢太郎。来季の定期演奏会には3回登場。自身が指揮する公演についてのコメントを紹介する。

 まずは24年6月の第524回定期について。
「バラエティに富んだプログラムを用意しました。コダーイ、ハイドン、モーツァルト、R.シュトラウスと、時代も違えばタイプもまったく異なる曲を並べています。
 名古屋フィルとは毎年ハイドンの交響曲を取り上げるようにしています。来季は『告別』。そして、1曲目に演奏するコダーイの『ハーリ・ヤーノシュ』は大好きな作品。ツィンバロンが加わる特別な編成なので、僕自身なかなか演奏機会がなく、今回はじめて取り上げます。
 後半の2曲、僕がオペラ作品の中で3本の指に入るくらい好きなR.シュトラウス《ばらの騎士》の演奏会用組曲とモーツァルト《フィガロの結婚》序曲はとても相性がいい。この2曲は絶対に組み合わせてやりたかった」とプログラミングの意図を述べた。

川瀬賢太郎

 24年10月の第527回ではベートーヴェン(シュルホフ編)の「失われた小銭への怒り」、グルダのチェロ協奏曲(独奏:佐藤晴真)、そしてベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を取り上げる。
「正々堂々とベートーヴェンに取り組もうと交響曲第5番をメインに据えました。グルダのチェロ協奏曲はお気に入りの作品で、ベートーヴェンとの組み合わせはとてもマッチすると思います。とても面白い作品で、ジャジーで、古き良きウィーンをリスペクトしたような感じもあります。弦楽器なしで、管楽器と打楽器のみという少し変わったオーケストラの編成にも注目してもらいたい」

 25年2月の第531回ではマーラーの交響曲第6番「悲劇的」を取り上げる。
「やっと6番ができる。マーラーは非常に大切にしている作曲家で、大事な繋がりがあるオーケストラと一緒に演奏できることは非常にありがたく思います。初めて取り組むということもあり、戦々恐々としている。ちなみにまだハンマーの回数は決めていません」

 定期演奏会では他にも、桂冠指揮者の小林研一郎がシーズン最初の第522回(24年4月)で生誕200年記念のスメタナ「わが祖国」を指揮。名誉音楽監督の小泉和裕9月の第526回に登場。25年3月の第532回では、ピアニスト、オルガニストとしても活躍するウェイン・マーシャルが登壇する。ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」と「セカンド・ラプソディ」で披露する弾き振りにも注目したい。

 「和欧混交」をテーマとし、毎公演日本人作曲家と外国人作曲家の作品を組み合わせる「市民会館名曲シリーズ」(会場:日本特殊陶業市民会館 フォレストホール)や、「豊田市コンサートホール・シリーズ」、「こども名曲コンサート」(会場:日本特殊陶業市民会館 フォレストホール)なども開催される。
 川瀬は、25年3月の「市民会館名曲シリーズ」で外山雄三、山本直純、シベリウスの作品を取り上げることについて、
「今回演奏する外山先生の交響曲『名古屋』は元々プログラムに入れていませんでした。しかし、突然の訃報を受け、名古屋フィルの礎を作ってくださったマエストロに敬意を表して本作を1曲目に演奏することにしました」とコメント。

 また、今年4月に第4代コンポーザー・イン・レジデンスに就任した小出稚子は、「これから名古屋フィルの素敵な部分をどんどん見つけていって、聴き出して、作品に投映させていければいいなと思います。川瀬監督は、東京音楽大学で私の一つ下の後輩でした。名古屋で再会して一緒に一つの作品を作れることがとても楽しみです」と意気込みを述べた。
 来季は25年1月の第530回定期演奏会と、24年9月のこども名曲コンサートで委嘱新作の世界初演が予定されている。こども名曲コンサートに向けて小出は、「子どもたちの日常と音楽の架け橋になったらいいなと、 そういう作品を目指しています」と意気込みを語った。

小出稚子

 名古屋フィル以外の楽団に客演する機会も多い川瀬は、「名古屋フィルは全国のオーケストラの中でも分厚い音を持っていて、自由さもある。そしていい意味で人間臭いところが好き。名古屋フィルが持っているものを生かしながら、さらに新しい音の引き出しを、これからのコラボレーションで作っていきたい」と展望を語った。

 若き音楽監督と名古屋フィルの2シーズン目。その進化に注目したい。

名古屋フィルハーモニー交響楽団
https://www.nagoya-phil.or.jp