文京シビックホール人気企画「響きの森クラシック」シリーズ 2025-26シーズンの聴きどころ

 土曜の午後に東京フィルハーモニー交響楽団による本格的な演奏を楽しむ人気公演「響きの森クラシック・シリーズ」(文京シビックホール主催、Vol.86のみ東京フィルとの共催)。その2025-2026シーズンのラインナップが公開された。豪華で多彩なソリストと指揮者たちが顔を揃えたプログラムに今回も期待が高まる。

左:横山 奏 ©平舘 平
右:中野りな ©kisekimichiko

 Vol.84(8/2)には近年急速に人気を集めている若手ヴァイオリニストの中野りなが出演。高校生だった2021年の第90回日本音楽コンクールと22年の第8回仙台国際音楽コンクールで優勝を飾るなど、その実力は折り紙付きだ。現在は、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースに在学中で、ウィーン市立音楽芸術大学でも研鑽を積んだ中野。確かなテクニックで熱情溢れる音楽を堪能させてくれるに違いない。指揮者の横山奏は、18年の第18回東京国際音楽コンクールで第2位に入賞した逸材で、昨年は大阪フィルの定期でシャルル・デュトワの代役を務めたことでも話題を呼んだ。活動の地歩を固めつつある横山が指揮する人気の管弦楽曲、チャイコフスキーの交響曲第5番も聴き逃せないものとなろう。

左:小林研一郎 ©K.Miura
右:小山実稚恵 ©Hiromichi Uchida

 Vol.85(11/29)の指揮を務めるのは、すでに本シリーズの「顔」となっているマエストロ・小林研一郎。彼の圧倒的な迫力によるベートーヴェン・プログラムとなれば演奏の満足度は約束されたもの。円熟のタクトが「運命」にどのような生命を吹き込むか楽しみだ。協奏曲のソリストは日本を代表するピアニストの小山実稚恵。近年、小山は音楽学者の平野昭とベートーヴェンのピアノ音楽に関する書籍を出版し、また生誕200年を迎えた2020年以降に後期ピアノ・ソナタを収録したCDを相次いでリリースするなど、ベートーヴェンへの真摯な取り組みを続けている。彼女の奏でる「皇帝」が、これまでの研究成果と並々ならぬ思いに裏打ちされた名演となることは疑いない。

左:アンドレア・バッティストーニ ©Takafumi Ueno
右:北村 陽

 オール・チャイコフスキー・プログラムのVol.86(26.1/17)には、やはり本シリーズに欠かせない指揮者となっているアンドレア・バッティストーニが登場。首席指揮者を務める東京フィルとは、絶大な信頼関係に基づき数々の名演を世に送り出してきた。本公演でも彼ならではの熱狂と興奮渦巻く名演が繰り広げられるのが目に浮かぶ。「ロココの主題による変奏曲」のソリスト・北村陽は、第29回ヨハネス・ブラームス国際コンクール、第92回日本音楽コンクール、ジョルジュ・エネスク国際コンクール、パブロ・カザルス国際賞でいずれも第1位を受賞した規格外の俊英。圧倒的な技術に支えられた演奏で作品の回顧的な優美さを感情豊かに描き出してくれることだろう。

左より:角田鋼亮 ©Makoto Kamiya/谷 昂登 ©井村重人/前橋汀子 ©岡本隆史

 Vol.87(26.3/7)は二人のソリストの演奏が楽しめる豪華版だ。ピアノの谷昂登は2020年第18回東京音楽コンクール第2位(最高位)、21年第90回日本音楽コンクール第1位等の輝かしい実績を誇る。冴えわたる技術と音楽性でチャイコフスキーの名協奏曲・第1番を存分に探究してくれるに違いない。もう一人はヴァイオリン界の巨匠、前橋汀子。一昨年傘寿を迎えるも演奏意欲は衰えを知らず、今年2月にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集のCDをリリースしたばかり。その彼女が計3曲でソロを聴かせてくれる本公演の贅沢さは別格だ。指揮の角田鋼亮はすでに東京フィルとの共演も多く、皆が安心して信頼を寄せる指揮者となっている。

 例年、全4公演がリーズナブルな価格で聴けるセット券が大好評とのことで、本シリーズを心待ちにしているファンの多さが窺える。2025-26シーズンのシリーズセット券も3月31日までの期間限定販売。チケット手配はお早めに。
文:近松博郎
(ぶらあぼ2025年3月号より)

響きの森クラシック・シリーズ 2025-2026シーズン
【Vol.84】 2025.8/2(土)
【Vol.85】 2025.11/29(土)
【Vol.86】 2026.1/17(土)
【Vol.87】 2026.3/7(土)
各日15:00 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111 
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