響ホール リサイタルシリーズ
上野耕平(サクソフォン)× 三浦一馬(バンドネオン)× 山中惇史(ピアノ)

左より、上野耕平、三浦一馬、山中惇史

八面六臂の活躍をする3人によるアンサンブルの妙技

 上野耕平(サクソフォン)、三浦一馬(バンドネオン)、山中惇史(ピアノ)。その名前を見ない日はないほど目覚ましい活躍を見せているトップ・プレイヤー3人が北九州に集結。コンサート前半はソロまたはデュオ、そして後半はトリオで多彩なプログラムを届ける。

 日本の音楽界においてこの3人がスペシャルである理由は、圧倒的なテクニックを持つプレイヤーでありながら、つねに新たな表現の可能性を追求するクリエイターであることだろう。上野は「The Rev Saxophone Quartet」や「ぱんだウインドオーケストラ」、三浦は「三浦一馬 五重奏団」や「東京グランド・ソロイスツ」、山中は「アン・セット・シス」といったように、ソロ以外にもグループやユニットを組んで積極的に新作を初演したり、他ジャンルとのコラボレーションを行ったりと多岐にわたる活動を展開している。共通するのは「楽器」や「ジャンル」を超越した創造性だ。

 現在発表されている曲目はいずれもトリオで演奏されるものだが、サクソフォン、バンドネオン、ピアノという、発音原理も成り立ちも異なる楽器によるアンサンブルはどのようなものになるのだろうか? 鍵となるのは編曲(アレンジ)だろう。バッハの「G線上のアリア」とラヴェルの「ボレロ」は山中の編曲、ピアソラ作品はすべて三浦による編曲だが、日頃から自分で演奏する作品を自ら編曲しているふたりだけに、それぞれの楽器の音色や響きを最大限に活かしつつ、新たな発見をもたらすような新鮮なアレンジを聴かせてくれるに違いない。

 なかでも楽しみなのがピアソラ作品。2021年の生誕100年、22年の没後30年というアニバーサリーが続き、彼らにとってはコンサートやレコーディングなどで、さまざまな編成で演奏を重ねてきた十八番と言えるレパートリーである。ピアソラの最高傑作と名高いオラシオ・フェレールの詩によるタンゴ・オペリータ《ブエノスアイレスのマリア》に登場する〈フーガと神秘〉。「ブエノスアイレスの四季」のなかの一曲で、メロディの美しさとリズムの強靭さをあわせもつ〈ブエノスアイレスの冬〉。ピアソラが唯一、サクソフォンと五重奏のために書いた哀愁あふれる「レオノーラの愛のテーマ」。若い頃はクラシックの作曲家を目指し、ジャズやロックなどさまざまな要素を取り入れ、アルゼンチン・タンゴを独自の芸術へと昇華させたピアソラのフロンティア精神は、上野、三浦、山中の姿勢とも重なるものがある。

 曲間には、3人の軽妙なトークや楽器紹介も予定されているとのこと。身構えず、気軽に足を運べて、ここでしか聴けないコアなアンサンブルを楽しめる機会をぜひお聴きのがしなく。

文:原典子

【Information】
響ホール リサイタルシリーズ
上野耕平(サクソフォン)× 三浦一馬(バンドネオン)× 山中惇史(ピアノ)
2023.9/2(土)15:00 北九州市立響ホール

●出演

上野耕平(サクソフォン)
三浦一馬(バンドネオン)
山中惇史(ピアノ)
●曲目
J.S.バッハ:G線上のアリア
ピアソラ:フーガと神秘、ブエノスアイレスの冬、レオノーラの愛のテーマ
ラヴェル:ボレロ ほか
●料金
全席指定
一般 : 4,000円(前売)
25歳以下:2,000円(前売/入場時要証明)
*未就学児入場不可
*当日各500円増

北九州市立 響ホール
https://www.hibiki-hall.jp/