尾高忠明(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

二人の作曲家による若き日の意欲作と気鋭ソリストが綴る熱きエネルギー

 数多いラフマニノフ生誕150年企画の中でも、注目のコンサートのひとつ。聴く機会の少ない交響曲第1番と、人気沸騰の亀井聖矢によるピアノ協奏曲第2番に加え、指揮台に立つ尾高忠明の実兄、尾高惇忠の作品も演奏される盛りだくさんのプログラム。

 ラフマニノフは、交響曲第1番の初演の失敗(演奏も良くなかったという)で、立ち直れないほどの精神的ショックを受けた。尾高忠明は「若いラフマニノフがすべてを注ぎ込んだ大変な名曲。評判の悪い曲だと思わないで聴いてほしい」と作品の真価を熱く語る。

 落ち込んだラフマニノフがニコライ・ダーリ博士の治療により恢復、ピアノ協奏曲第2番を作曲して大成功を収めたエピソードはよく知られている。ソリストの亀井は昨年ロン=ティボー国際音楽コンクールにて第1位を受賞。みずみずしいリリシズムと繊細なタッチ、華やかで圧倒的なヴィルトゥオジティを有するピアニストだ。尾高は亀井について「審査員と聴衆の評価が食い違うことがあるが、聴衆賞、評論家賞も受賞したことは正真正銘のアーティスト」と称賛し、初共演に期待を寄せる。

 「オーケストラのための『イマージュ』」は尾高惇忠がパリ留学から帰国後、精魂を傾けて作曲、初演は今回と同じく尾高忠明指揮東京フィルにより行われ、尾高賞(1982年)を受賞した。尾高は「短い曲にその時浮かんだものがすべて凝縮されている」と高く評価する。ラフマニノフの初交響曲と尾高惇忠の初オーケストラ作品、2つの新鮮なエネルギーを受け止めたい。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2023年6月号より)

第155回 東京オペラシティ定期シリーズ
2023.6/23(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第986回 オーチャード定期演奏会
6/25(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第987回 サントリー定期シリーズ 
6/27(火)19:00 サントリーホール
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