第32回青山音楽賞 受賞者が決定

 京都市内で室内楽専用ホール「青山音楽記念館 バロックザール」を運営する公益財団法人青山音楽財団は、1月27日、青山音楽賞の受賞者を発表した。
 青山音楽賞は同財団が行う顕彰事業で、毎年1月から12月の間にバロックザールで開催された演奏会の中から、演奏技術だけでなく演奏会そのものを総合的に評価するユニークな審査方式で選考される。
 新人賞、青山賞、バロックザール賞の3部門が設けられており、受賞者は賞金のほか、受賞記念演奏会の開催費が助成される。新人賞受賞者には留学や国際コンクールへの参加を支援する研修費も贈られる。

第32回青山音楽賞受賞者
新人賞
(演奏会当日26歳未満が対象)/
山根風仁(ヒストリカル・チェロ)若尾圭良(ヴァイオリン)
青山賞(演奏会当日26歳以上が対象)/
酒井健治(作曲)入川舜(ピアノ)
バロックザール賞(アンサンブルの演奏会が対象)/
長山恵理子(ヴァイオリン)&ミハーイ・ベレッツ(ピアノ)デュオ

 32回目となる今回は新人賞にヒストリカル・チェロの山根風仁、ヴァイオリンの若尾圭良が選ばれた。

左:山根風仁(c)John Cooper 右:若尾圭良 (c)Jenny Chou Photography

 山根は1996年高知県出身。東京藝術大学を経て英国王立スコットランド音楽院修士課程HIPP(歴史的演奏習慣)科を卒業。ウィグモアホールで開催されたCAVATINA室内楽コンクールで優勝するなど室内楽奏者としても活躍。現在はブリュッセル王立音楽院で学んでいる。
 若尾は2006年ボストン生まれ。2021年メニューイン国際ヴァイオリンコンクール・ジュニア部門で優勝。現在はウォールナットヒル芸術高校に在学中。2023年はボルティモア室内管、ボストン・シヴィック響との共演や、ニューヨークやロンドンでのリサイタル、ヨーロッパの音楽祭への出演を控えている。

 芸術性をさらに高めることが期待される音楽家に授与される青山賞は作曲家の酒井健治、ピアニストの入川舜が受賞。

左: 酒井健治 (c)Maxime Lenik 右: 入川舜(c)Gaël Vacher

 酒井は京都市立芸術大学を経てパリ国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。武満徹作曲賞第1位、エリザベート王妃国際音楽コンクール作曲部門大賞、文化庁長官表彰など受賞多数。作品はリヨン国立管、ルツェルン響、N響、アンサンブル・アンテルコンタンポランなどで初演されている。
 入川は静岡市出身。東京藝術大学を経て同大学院研究科を修了。パリ地方音楽院とパリ国立高等音楽院ではピア ノ伴奏を学ぶ。2010年度のバロックザール賞も受賞している。 パリ地方音楽院で教鞭をとった後、現在は東京藝術大学で非常勤講師を務めている。

 バロックザール賞は長山恵理子(ヴァイオリン)&ミハーイ・ベレッツ(ピアノ)デュオ。

左:長山恵理子 (c)Ogaga Blessing 右:ミハーイ・ベレッツ (c)Zsófi Raffay

 長山は、桐朋学園大学を経て英国王立音楽院修士課程を修了。2019年、トロンハイム国際室内楽コンクールのピアノ三重奏部門にて第3位および聴衆賞、コンクール委嘱曲賞を受賞 。現在、ロイヤル・フィルハーモニー管の第1ヴァイオリン奏者。
 ベレッツはブダペスト生まれ。英国王立音楽院を首席で卒業。第2回マンハッタン国際音楽コンクール金賞、第15回ゲザ・アンダ国際ピアノコンクールにおいてリスト=バルトーク賞など受賞多数。ハンガリー芸術アカデミーより奨学金を受け、ハンガリー・ラジオのマーブル・ホールでバルトークの全ソロ作品を演奏した。

 3月4日には、授賞式を青山音楽記念館バロックザールにて開催。後日行われる式典および披露演奏会は、特設ページにて配信される予定。

[各部門の評価]
新人賞

受賞公演:山根風仁 J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 全曲 京都公演 2022.7/21
評価:高度な技巧と音楽性をあわせ持つチェリストの、古楽器による意欲的なプログラム。一音一音の意味合いを的確に悟り、豊かな表現世界を見事に築いていた。

受賞公演:若尾圭良 ヴァイオリンリサイタル ~メニューイン国際コンクール優勝記念 前芸術監督ゴードン・バックを迎えて~ 2022.12/2
評価:ずば抜けた集中力、観客を魅了する技巧、目を見張るような瑞々しくのびやかな音楽性。
全てにおいてスケールの大きいソリストとしての資質を感じさせた。

青山賞
受賞公演:酒井健治 個展2022 – Kenji Sakai meets club MoCo 2022.11/12
評価:奏者と楽器の特性や可能性を最大限に引き出す力が備わっていることは言うまでもない。
作曲家が未来に向けて成し遂げたことの豊かさを想う。

受賞公演:入川舜 ピアノリサイタル 2022.12/16
評価:確固たる技術と、歌心を忍ばせながらも知的コントロールの行き届いた表現。
音楽の本質を真摯に探求しようという姿勢は称賛に値する。

バロックザール賞
受賞公演:長山恵理子&ミハーイ・ベレッツ デュオ・リサイタル 2022.11/26
評価:二人の目指す繊細で丁寧な音作りは一致し、聴衆に語りかけるような温かさを持つ。
最初から最後まで、驚き、感動が心に染み入る名演奏であった。

青山音楽賞
https://aoyama-music-foundation.or.jp/music_awards_winner/