小澤征爾音楽塾 首席指揮者が振る《ラ・ボエーム》に注目
3月に「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIX」としてプッチーニの傑作《ラ・ボエーム》が京都、東京、名古屋で上演される。指揮者はこのシーズンから小澤征爾音楽塾首席指揮者となったベネズエラ出身のディエゴ・マテウスである。演出はデイヴィッド・ニース、装置と衣裳はロバート・パージオーラによる新制作で、ミミにエリザベス・カバイエロ、ロドルフォにジャン=フランソワ・ボラス、ムゼッタにアナ・クリスティなどを配したフレッシュな顔ぶれがキャスティングされた。オーケストラの塾生オーディションのために来日したマテウスに、小澤征爾音楽塾での活動への抱負を聞いた。
「オーディションでも分かりましたが、若くて優れた演奏家が集まっているので、自分が作りたい音楽を彼らと一緒に作れる可能性がとても高いと期待しています」と語るマテウス。小澤征爾音楽塾の首席指揮者に抜擢されたことに対しても、こんな想いを話してくれた。
「若い音楽家たちがオペラを通して音楽を学ぶこと、プロフェッショナルな高いレベルの経験をしてもらうこと、そしてそこに自分も加わり、彼らの手助けをできるということに、とても大きな魅力と責任を感じています。日本の若い世代はアジアの中でもトップクラスにあると思うので、この音楽塾で学んだことを将来に活かして、音楽的なリーダーとなっていってくれるだろうとも期待します」
ご存知のように、マテウスはベネズエラ発祥の「エル・システマ」という音楽教育システムのなかでヴァイオリン、指揮も学んで、世界的な活躍を続けている。
「僕の若い頃も、まさにこのオペラのように、若く貧しいアーティストたちが集まって暮らし、一緒に音楽を作ってきたという経験があります。そういう点で《ラ・ボエーム》はまさに僕にとって身近な作品です。若い頃には本当にさまざまな出来事がありましたが、それらを乗り越えて、音楽家として成長してきました。日本の若い演奏家たちにも、このプッチーニの音楽が自分たちに近い世界を描いたものであるということを理解してもらい、よりプッチーニの音楽の魅力を深めていく、そんな風にリードすることができたら嬉しいですね」
マテウスと小澤征爾の出会いは、彼がシモン・ボリバル・ユース・オーケストラのヴァイオリン奏者として来日公演に参加した時だったという。小澤から指揮を学んだわけではないが、その後も出会いのチャンスがあり、また故クラウディオ・アバドの推薦もあって、2011年にサイトウ・キネン・オーケストラの指揮者として松本に招かれた。その後、3回にわたり同楽団を振っており、22年の小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト《こうもり》でも指揮者を務めた。すでに交流のあるサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーも加わる、この小澤征爾音楽塾オーケストラとマテウスの新しい挑戦を見守りたい。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2023年2月号より)
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIX
G.プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》新制作
2023.3/17(金)18:30、3/19(日)15:00 ロームシアター京都
問:ロームシアター京都チケットカウンター075-746-3201
3/23(木)15:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
3/26(日)15:00 愛知県芸術劇場
問:東海テレビチケットセンター052-951-9104
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