緻密な構築のうえに展開される起伏に富んだブラームス
高関健は1994年から2000年にかけて新日本フィルの指揮者を務め、同楽団とは深い関わりがある。今回、定期としては8年ぶりに新日本フィルに登場。綿密な譜読みで定評のある高関が得意とするブラームス・プログラムを指揮する。前半のピアノ協奏曲第2番は、ピアノと管弦楽が見事に融合、ピアノ独奏部を持つ交響曲とも言われるブラームス円熟期の名曲。ソリストはヨーロッパを中心に活躍し、世界的な名声を得ているネルソン・ゲルナーが務める。2009年、尾高忠明指揮のN響とこの曲を共演しており、たっぷりとした響きと細部にまで神経の行き届いた、音楽性豊かな演奏を披露した。高関が揺るぎなく構築するオーケストラと、ゲルナーの瑞々しいピアノが一体となる雄大な演奏が生まれることだろう。
高関指揮のブラームス「交響曲第3番」は、今年7月東京シティ・フィルでも聴いた。第1楽章冒頭からブラームスらしい渋い響きが充満、分厚い低弦がどっしりとした土台をつくった。サガンの小説『ブラームスはお好き』を原作とする映画『さよならをもう一度』(1961)の主題曲にもなった第3楽章は、チェロに朗々と主題を歌わせ、ヴァイオリンとの対位法も緻密だった。第4楽章の激情渦巻く再現部は高関の真骨頂で、熱気あふれる演奏が展開された。柔らかく繊細な響きを持つ新日本フィルとの共演では、また異なった演奏になるのではないだろうか。夕空が刻々と色合いを変えていくような、あるいは、虹が儚く消えていくような終楽章の最後にも期待したい。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2022年12月号より)
すみだクラシックへの扉 第12回
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