100周年に向けて挑戦し続けるシーズンへ
〜東京二期会が2023/24シーズンラインナップを発表

 東京二期会が9月6日、2023/24シーズンラインナップを発表した。会見には、清水雅彦・東京二期会理事長、山口毅・常務理事兼事務局長に、木下美穂子(ソプラノ)、城宏憲(テノール)が登壇。9月8日に初日を迎える創立70周年記念公演《蝶々夫人》(栗山昌良演出)で指揮するアンドレア・バッティストーニがフォトセッションにかけつけ、会見を華やかに彩った。
(2022.9/6 新国立劇場オペラパレス)

左より:山口毅、清水雅彦、木下美穂子、城宏憲

 新シーズンに向けて清水理事長は、「来シーズンは70周年のさらにその先の未来にむけた第一歩として、創立当初の志を継承するとともに、新しい挑戦に満ちたシーズンにしていきたい。単に海外の舞台の再現にとどまらない、東京二期会オリジナルの舞台を海外アーティストとともに創造し、さらに海外に向けて発信するプロダクションへと進化させていきたい」と考えを述べた。

 続いて山口事務局長がラインナップの演目とトピックについて説明。シーズンテーマは「新しいことを次々と東京二期会」とし、「100周年を目指し、新しいことに挑戦し続けることが二期会の使命。2023/24シーズンはそれを実現していくためのラインナップ」と語った。
 2023/24シーズンは5演目を上演。日生劇場60周年の主催公演ラインナップで既報の宮本亞門演出《午後の曳航》を含む3作品が新制作となる。開幕公演の《ドン・カルロ》(新制作)では、女性オペラ演出家のトップを走るロッテ・デ・ベアが日本で初演出するのが注目だ。出演予定の木下美穂子(エリザベッタ)、城宏憲(ドン・カルロ)もそれぞれコメントを寄せた。

木下「いまバッティストーニと《蝶々夫人》に取り組んでいますが、プッチーニ作品を彼と共演するのは初めてで想像以上に熱く、優雅な音楽ができています。《ドン・カルロ》でもご一緒しますが、エリザベッタはイタリア留学時代から温めてきた作品で初めて歌います。1年間楽しみに創り上げていきたい」

「マエストロとは二期会デビューの《イル・トロヴァトーレ》や《アイーダ》とヴェルディ作品で共演し、9月の《蝶々夫人》では彼のプッチーニに対するこだわりがよく見えてきて、本場の彼の音楽、それに対峙する日本人歌手を見守っていただければと思います。
 《ドン・カルロ》は、昨年の新国立劇場上演時にカヴァーとして入っていましたが今回がロールデビューです。5幕版の1幕の長大なデュエットは、演奏会で取り上げたこともあり曲は体に入っています。アンドレアが求める音楽に向き合いつつ、王子として友との交流、ロドリーゴの死を経て成長していく姿を観ていただきたい」

 質疑応答でコロナ禍における上演、新たな層の集客について問われると、清水理事長、山口事務局長がそれぞれ次のように述べた。

山口「平日公演は高齢者の方が外出を控えていることなどもあり苦しいですが、お客様は7割ぐらい埋まっており、地方は完売公演もでています。コロナの当初は日本では文化に対する理解度が低かったですが、チケット代の寄付やクラウドファンディング、現在は文化庁アートキャラバンや経産省のJ-LOD(公演を収録して全世界に発信する)など期限付きではあるものの補助があります。ラインナップでは、宮本亞門さんやコンテンポラリー・ダンスの中村蓉さんなど、いろいろな分野に繋がりのある方を起用することで、総合芸術のオペラに様々な角度から興味を持ってもらえるような取り組みを今後も考えています」
清水「欧米では鑑賞して自らが楽しもうという方と、ドネーションして支えようという層があります。日本では前者は増えていますが、後者が少ない。後者が充実してはじめて欧米と肩を並べるオペラ芸術になるのではないでしょうか」

 100周年を目指し新たな一歩を踏み出す東京二期会。2023/24シーズン以降の“挑戦”に期待したい。

左より:アンドレア・バッティストーニ、木下美穂子、城宏憲

【2023/24シーズンラインナップ】

●2023年
[10月]ヴェルディ作曲《ドン・カルロ》(新制作)
オペラ全5幕/日本語字幕付原語(イタリア語)上演
《東京二期会オペラ劇場》シュトゥットガルト州立劇場との提携公演
指揮:アンドレア・バッティストーニ 演出:ロッテ・デ・ベア
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

この9月よりウィーン・フォルクスオーパーの芸術監督に就任したロッテ・デ・ベアの、日本で初となる演出作品。鬼才演出家ペーター・コンヴィチュニーの下で研鑽を積み、これまでにバイエルン国立歌劇場《三部作》、パリ・オペラ座《アイーダ》、エクサン・プロヴァンス音楽祭《フィガロの結婚》を演出している逸材。
バッティストーニが得意とするレパートリーの一つ、《ドン・カルロ》を日本で初披露。二期会では2014年にバッティストーニの師ガブリエーレ・フェッロ指揮で上演し、その弟子が9年後に指揮することになる。
公演は東京以外も予定している。

*諸般の事情により、指揮者は当初発表のアンドレア・バッティストーニから、レオナルド・シーニに変更となりました。

[11月]ヘンツェ作曲《午後の曳航》(2005年改訂ドイツ語版日本初演・新制作)
オペラ全2部 日本語字幕付原語(ドイツ語)上演
《東京二期会オペラ劇場》 NISSAY OPERA 2023提携
指揮:アレホ・ペレス 演出:宮本亞門
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

宮本亞門による三島由紀夫原作のオペラ第2弾。指揮はフランダース歌劇場の音楽監督のペレス。舞台美術と衣裳はオーストリア人の才能あるデザイナー、クリストフ・ヘッツァーが《ドン・カルロ》に引き続き担当。

●2024年
[2・3月]ワーグナー作曲《タンホイザー》

オペラ全3幕 日本語字幕付原語(ドイツ語)上演
《東京二期会オペラ劇場》フランス国立ラン歌劇場との提携公演
指揮:アクセル・コーバー 演出:キース・ウォーナー
管弦楽:読売日本交響楽団

2021年2月の上演の際に入国制限により来日できなかったアクセル・コーバーを改めて招聘。初来日となるコーバーはワーグナー作品を得意とし、世界的に高く評価されている。キース・ウォーナーも来日予定で、二期会の歌手とともに新たな“東京版タンホイザー”を目指す。

[5月]ヘンデル作曲《デイダミア》(新制作)
オペラ全3幕 日本語字幕付原語(イタリア語)上演
《二期会ニューウェーブ・オペラ劇場》
指揮:鈴木秀美 演出:中村蓉
管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ

シリーズ「二期会ニューウェーブ・オペラ劇場」は3年に一度バロックオペラを中心に、オーケストラ含めた若手育成を目的としたプロジェクト。《デイダミア》はヘンデルの最後のオペラと言われ、世界的にも上演機会の少ない作品。2021年の《セルセ》と同じメンバーである鈴木秀美指揮&中村蓉演出で上演。

[7月]プッチーニ作曲《蝶々夫人》
オペラ全3幕 日本語字幕付原語(イタリア語)上演
《東京二期会オペラ劇場》ザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー・ドレスデン)、
デンマーク王立歌劇場およびサンフランシスコ歌劇場との共同制作公演
指揮:ダン・エッティンガー 演出:宮本亞門
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

2019年10月に東京にてワールドプレミエ、その後世界を巡回して今回が凱旋公演となる。20年に亡くなった髙田賢三が衣裳デザインを手掛けた最後の作品。ダン・エッティンガーの二期会デビュー。首都圏以外の公演も予定されている。

東京二期会
http://www.nikikai.net
http://www.nikikai.net/news/view_00681.html
*2023/24シーズン各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。