ニューヨーク出身の名指揮者と辿る近現代アメリカ音楽の傑作
都響から劇的なダイナミズムを引き出し、毎回好評を博しているアンドリュー・リットン。現在は生まれ故郷でニューヨーク・シティ・バレエの音楽監督を務めているが、今シーズンも5月定期のために来日する。
プログラムは聴き手に間違いなく元気を与えてくれる豪快なオール・アメリカン・プロだ。オープナーとなるのはシンディ・マクティーの「タイムピース」。2000年、ダラス響の100周年のシーズンを記念して作曲され、当時、同楽団の音楽監督だったリットン自身が初演している。多彩な打楽器が刻む時の“パルス”の上で、緊迫感溢れる協奏が繰り広げられる。この曲、吹奏楽バージョンも有名だ。
続いてバーンスタイン「セレナード」(プラトン『饗宴』による)。全5楽章からなり、各楽章にはプラトンの著作に登場する人物の名が冠されている。ユーモラス、メロディアス、リズミカルと、それぞれの人物が活写され、宴もたけなわとなる。曲を導いていくのは独奏ヴァイオリン。ソロの金川真弓は18年にロン・ティボー、19年にチャイコフスキーと難関コンクールに立て続けに入賞した逸材だ。
メインはコープランド「交響曲第3番」。第二次世界大戦末期に書き始められ、1946年に完成している。コープランドは多民族国家であるアメリカ的なるものを音楽で追求した作曲家だが、この曲はそれらが充実した形で統合され、最も愛国的かつシンフォニックに昇華されている。フィナーレ冒頭の「市民のためのファンファーレ」は、祝祭の幕開けなどに単独でも演奏される有名曲だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年5月号より)
第951回 定期演奏会Aシリーズ
2022.5/30(月)19:00 東京文化会館
第952回 定期演奏会Bシリーズ
5/31(火)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
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