東北地方初のプロ・オーケストラとして誕生した山形交響楽団は2022年、創立50周年を迎える。4月16、17日、山形テルサホールの定期演奏会は、第300回の節目にもあたる。創立名誉指揮者の村川千秋(1933- )がシベリウスの交響詩「フィンランディア」「カレリア組曲」、常任指揮者の阪哲朗(1968– )がR.シュトラウスの歌劇《ばらの騎士》抜粋を前半、後半で振り分ける記念定期にふさわしいプログラムだ。
山形県の人口は約100万人、山形市は約25万人。日本で作曲、米国でレオポルド・ストコフスキーらに指揮を学んだ村川は帰国後、故郷山形県の子どもたちに「生の音楽を聴かせたい」の一念で山響を設立、自らマイクロバスやトラックを運転しながら県内の全市町村を演奏して回った。現在では60歳以下のほぼすべての県民が「一度は山響を聴いた」経験を持つ。シベリウスは村川が得意にするレパートリー。90歳の誕生日(1月1日)2週間後の2023年1月15日、「やまぎん県民ホールシリーズVol.4」でも交響曲第3番を指揮する予定だ。
2007-2009年の首席客演指揮者を経て、2019年4月から常任指揮者を務める阪は京都市生まれだが「両親は100%山形県人。3歳の時に初めて山形市を訪れ、山響の練習場を見た記憶があります」。京都市立芸術大学とウィーン国立音楽大学で指揮を学び、1995年の第44回ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝したが、アイゼナハやレーゲンスブルクの音楽総監督(GMD)をはじめ、ドイツ語圏の歌劇場でカペルマイスター(楽長)の経験を積み、コンサートよりもオペラの現場での活躍が長い。2023年4月には沼尻竜典の後任として、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール芸術監督に就く予定だ。
2022年1月3日の「NHKニューイヤーオペラコンサート」で東京フィルハーモニー交響楽団を指揮した模様は生中継され、多彩なバックグラウンドを持つ歌手それぞれの呼吸やテンポの揺れにピタリと合わせつつ、豊かに感興を盛り上げる手腕で「本物のオペラ指揮者」(東京フィルのコンサートマスター、近藤薫)を印象づけた。山響とのリハーサルでも「あえて練習を減らしたり、逆に増やしたりとメリハリをつけながら、柔軟性を引き出す」手法をとり、大局の流れと瞬間ごとの音のドラマの両立を目指す。
《ばらの騎士》では2017年東京二期会公演のマルシャリン(元帥夫人)林正子、同公演と2022年4月の新国立劇場のオクタヴィアン小林由佳、2022年3月の兵庫県立芸術文化センター主催公演、《夕鶴》の主役つうで圧巻の存在感を示した石橋栄実のゾフィーと、東西実力派歌手のテルツェット(三重唱)にも期待がかかる。
文:池田卓夫
山形交響楽団 第300回記念定期演奏会
2022.4/16(土)19:00、4/17(日)15:00 山形テルサホール
指揮:村川 千秋、阪 哲朗
独唱:林 正子(元帥夫人) 小林 由佳(オクタヴィアン) 石橋 栄実(ゾフィー)
シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26
シベリウス:カレリア組曲 作品11
R.シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」作品59(抜粋)
問:山響チケットサービス 023-616-6607
https://www.yamakyo.or.jp17日公演はすでに完売、16日も残席僅少、チケットはお早めに!
→4/15追記 両日とも完売