ユベール・スダーン(指揮) 東京交響楽団

キーワードは“マンフレッド”

 
 音楽監督ジョナサン・ノットとともに快進撃を続ける東京交響楽団だが、その礎を築いたのは、なんといっても10年間にわたって音楽監督を務めた前任者ユベール・スダーンだ。その功労者スダーンが、6月に東響の指揮台に帰ってくる。名コンビの健在ぶりを示してくれることだろう。

 シューマンの「マンフレッド」序曲とピアノ協奏曲(独奏は菊池洋子)、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」というプログラムも魅力的だ。シューマンもチャイコフスキーもしばしば文学作品からインスピレーションを受けて曲を書いた作曲家だが、ともにバイロンの劇詩『マンフレッド』にちなんだ作品を残している。そして題材を反映してなのか、両曲ともどこか思索的で、玄妙な味わいを持っているところがおもしろいところ。道ならぬ恋で愛する人を失ったマンフレッドは、神秘の力により精霊を呼び出し「忘却」を求めるが、願いは叶えられず、代わりに「不死」の呪いをかけられる。マンフレッドは死を求めてアルプスを彷徨う…。原作は多くの日本人にとって分かりやすいともなじみ深いとも言えないが、むしろこの2曲からマンフレッドの漠然としたイメージを描いている人も少なくないのでは。

 「マンフレッド」といういくぶん地味なテーマのプログラムに華やかさを添えるのが、ピアニストの菊池洋子。シューマンならではの豊かなファンタジーを披露してくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年6月号より)

第671回 定期演奏会 
2019.6/15(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
http://tokyosymphony.jp/

第147回 名曲全集 
2019.6/16(日)14:00 カルッツかわさき
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200 
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/