ドイツ語の「歌物語」が最高に輝くとき
言葉と音楽の密接な結びつきが魅力のドイツ・リート。なかでも物語詩に作曲されたバラードは、生命力がある言葉に感情が活写された音楽が注ぎ込まれたとき、聴き手を深い感動へといざなう。そんな歌唱を届けられる日本人歌手として、真っ先に思い浮かぶ一人がバスバリトンの木村善明である。
東京藝大大学院修了後、2007年に渡独した木村は、現在ビーレフェルト歌劇場の専属歌手として活躍しており、オペラでも艶やかなやわらかい美声で、言葉を際立たせながら役の深奥に入り込む。その間、21年には東京藝大で博士号を取得しており、実践と理論の両面からその歌唱は深みを増している。
今回歌うのは木村お気に入りのヴォルフに、博士論文でも取り上げたレーヴェという、2人の作曲家による「歌物語」。理解が深まる朗読(山崎美貴)がつくのもうれしい。あのフィッシャー=ディースカウの薫陶を受けた子安ゆかりのピアノを得て、珠玉の声による魂を揺さぶる物語がいくつも繰り広げられる。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2024年5月号より)
2024.5/31(金)19:00 トッパンホール
問:ヤタベ・ミュージック・アソシエイツ 03-3787-5106
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