カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

実力・人気急上昇のカーチュンが振るマーラー・シリーズ第2弾

 シンガポール出身の気鋭カーチュン・ウォンが、首席客演指揮者を務める日本フィルとともに、ふたたびマーラーに取り組む。昨年12月の交響曲第5番に続いて、5月の東京定期では交響曲第4番が演奏される。グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールの優勝者であるウォンにとって、マーラーは重要なレパートリー。前回の第5番では細部まで彫琢されたダイナミックで輝かしい演奏を聴かせてくれたが、今回の第4番にも大いに期待が高まる。終楽章に登場するソプラノは三宅理恵。清澄な歌唱によって天上の世界を表現してくれることだろう。

 マーラーに組み合わされるのは、伊福部昭作曲のピアノと管絃楽のための「リトミカ・オスティナータ」。日本人作曲家の作品に対しても意欲を見せるウォンと日本フィルのコンビならではの選曲だ。「リトミカ・オスティナータ」とは「執拗に反復する律動」の意。六音音階と変拍子を用いた反復的な音楽がアジア的な生命力を想起させる。ピアノは昨年エリザベート王妃国際音楽コンクールで第3位に入賞した俊英、務川慧悟。若い才能たちによる伊福部という点でも注目に値する。

 なお、ウォンは代役として第377回横浜定期(5/14)と杉並公会堂シリーズ2022-23 第1回(5/15)にも出演することが決まっている。南紫音の独奏によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲と、ドヴォルザークの交響曲第7番ほかの民族色豊かなプログラム。こちらも名演を期待できそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年5月号より)

第740回 東京定期演奏会〈春季〉
2022.5/27(金)19:00、5/28(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp