ジャン=ギアン・ケラス 無伴奏チェロリサイタル

晩秋にはチェロのモノローグがよく似合う

(c)Marco Borggreve
(c)Marco Borggreve
 このチェリストの可能性は、いったいどこまで広がるのだろう。ほぼ毎年のように来日し、そのたびに時代の先端を走る音楽家としての証明を提示してくれるジャン=ギアン・ケラス。11月の来日公演では東京、横浜から名古屋や松本、そして西宮などで多彩なプログラムのコンサートを行う。中でも東京オペラシティでの「無伴奏」作品シリーズ(2回)は、ケラスの意欲が伝わってくる内容だ。
 11月16日は、J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」(全6曲)を一気に全曲聴かせてくれるという、スペシャル感満載のリサイタル。演奏順も調性などを考慮しており、6つのユニークかつ存在感ある造形物をゆっくりと見て回るような感触が得られるかもしれない。過去に彼の演奏でバッハを聴いたという方も「ケラスならいつも新しい」ということをお忘れなく。
 11月22日は、この日が生誕100年の作曲家・ブリテンによる3つの組曲を。言うまでもなくJ.S.バッハにならい、盟友ロストロポーヴィチのために書かれた深遠な作品だ。ケラスは1998年にCD録音しており、それは現在もロングセラーを続けているが、やはりライヴでの音の深みやぶつかり合いなどは何物にも代え難いし、今年だからこそブリテンの魂に近づく道が用意されているのではないだろうか。大地からのエネルギーがチェロを通じて発散されるような、コダーイの無伴奏ソナタも演奏される。チェロのモノローグは晩秋によく似合うのだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2013年11月号から)

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 全曲演奏会 ★11月16日(土)
ベンジャミン・ブリテン 生誕100年バースデー・コンサート ★11月22日(金)
会場:東京オペラシティ コンサートホール
問 東京オペラシティチケットセンター
 03-5353-9999
http://www.operacity.jp
ローチケ Lコード:37162