New Release Selection

【CD】藤倉大:タートル・トーテム

 今回も藤倉大の倦むことを知らない能産性に圧倒させられた。フル編成の管弦楽曲、協奏曲を含む全6曲。アイディア満載の楽曲が収録可能時間いっぱいに繰り広げられる。藤倉は各奏者との緊密なコラボを通じて聴き手の身体性を喚起するユニークな表現領域を開拓してきたが、ブックレットの対談を読み、録音の編集作業まで自分でこなしていること…

【CD】シャコンヌ/チェロ・クァルテットK

 大御所安田謙一郎を中心に、現N響のメンバーである藤村俊介と宮坂拡志、そしてベテランの木越洋で結成されたチェロ・クァルテットKのデビュー盤。第1チェロを安田、そして最低声を木越がガッチリと取り囲み、その中で藤村と宮坂が自由に泳いでいるような趣、自在さと統一感を兼備した素晴らしいアンサンブルだ。本アルバムで最高の聴きもの…

【CD】笑顔で会える日のために〜あなたに寄り添うピアノ作品集/辻井伸行

 純白の世界。だれよりもピアノの清らかな美しさを引き出す辻井伸行が、コロナ禍の時代に、すべてのひとに「寄り添う」アルバムを編んだ。クラシック作品はメロウな名品ばかりが選ばれ、弱音のタッチの繊細さが実にすばらしく、豊かな残響までとらえた録音も相まって、なによりの癒しの時間になる。さらに、邪念のかけらもない辻井自身の楽曲に…

【CD】J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲全集 Vol.1/渡邊順生&The Baroque Band

 歴史的鍵盤楽器の名匠・渡邊順生が、実力派の古楽アンサンブルと臨んだ、大バッハのチェンバロ協奏曲全集の第1集。堅固な構築美と艶やかな歌心を両立する一方、気鋭のソリストたちと“競演”する、複数楽器のための協奏曲では、饒舌かつしなやかな会話を楽しむ雰囲気も。バックの面々も、渡邊の音楽創りの意図を丹念に掬い取ってゆく。また、…

【SACD】ブラームス:交響曲第2番&第3番/尾高忠明&大阪フィル

 昨年9月、10月に行われたザ・シンフォニーホールでのライブ。ブラームス・チクルスの実演を聴き、批評も書いたが、このCDは格別の出来である。尾高の丁寧な造形と彫琢が随所で光っている。交響曲第2番はまず、しなやかな弦の響きが美しい。ホルンや木管が交錯する響きの変化も豊かだ。緩徐楽章のチェロ、舞曲楽章のオーボエやクラリネッ…

【CD】さんごじゅの花 池辺晋一郎 室内楽作品集Ⅲ

 本年喜寿を迎えた池辺晋一郎はなおも盛んな創作活動を展開しているが、本アルバムは1980年代から2010年代に書かれた室内楽曲(ソロ曲もあり)を集成、かつ冒頭と末尾にはその編成に収まらない曲を縁取るように配置してシンメトリカルに構成。全8曲中殊に印象深いのは高度な技巧と池辺独特の歌謡性が結び付いた「ストラータⅡ」(フル…

【CD】ロマンス ヨアヒムの愛器でヨアヒムを聴く/永峰高志&久元祐子

 19世紀のヴァイオリンの巨匠ヨーゼフ・ヨアヒムが愛用したことから、その名がある1723年製ストラディヴァリウス〈ヨアヒム〉。現代日本の名匠・永峰高志がこの銘器でヨアヒム自身や、親交のあったシューマン夫妻、そしてブラームスの佳品を紡ぐ。その艶やかな音色は、歴代の巨匠たちの魂が層を成して重なっているよう。名匠は敬意と慈し…

【SACD】ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 他/上岡敏之&新日本フィル

 昨年3月のすみだ平和祈念音楽祭のライブ。「新世界交響曲」は正攻法で作品の骨組みをがっちりと捉えた。滑り出しから集中力が高く、ほの暗く深いサウンドでじっくり進めていく。とりわけ少し遅めのテンポで構築した第三楽章には、作品に対する姿勢が端的に表れた。一方、思わぬ方向から作品に切り込みぐいぐいと肉薄する上岡節も健在だ。コダ…

【SACD】バッハ:ゴルトベルク変奏曲/ラン・ラン

 20年以上にわたる探求やピリオド楽器奏者のシュタイアーとの意見交換などを経ながら、満を持して録音された人気奏者の人気作。90分強の演奏時間が示す通り、ラン・ランは1音1フレーズにニュアンスを込めて、じっくりと―特に遅い変奏は長大なモノローグの如く―曲を運ぶ。だが音楽は絶えず流動し、音色と表情の多様性やリピート時のこま…

【CD】日本の歌を集めて4 南天の花/小松英典&塚田佳男

 心に沁みわたる、美しき言葉と旋律。ドイツ・リートの名手として国際的に活躍するバリトンの小松英典が、日本歌曲研究・伴奏の第一人者、塚田佳男と共に取り組む『日本の歌を集めて』シリーズ。第4弾は、原爆病と闘いつつ、医療活動を続けた故・永井隆の詩による佳品〈南天の花〉を標題に。「コロナ禍の今、最前線にいる医師らの姿が重なる」…