ヴィオラ界を名実共に牽引する須田祥子の充実ぶりを示す、痛快な無伴奏アルバムが生まれた。とにかくイザイのソナタ第3番が圧巻。ヴァイオリンでも難曲だが、さらに困難なはずのヴィオラで唖然とするほどの弾きっぷり。本作のもつ熱気と妖気を、深い音色で落ち着きさえ湛えて伝える。バッハはこの楽器のイメージ通りに端整、温かい音色で過不足なし。ペトロフはヴィオラ単体での意外な表現法の数々を楽しめる佳品。オリジナルのヒンデミットはやはり自然な佇まいで、狂気の第4楽章を含めて貫禄すらある。ヴィオラの表現の定番から限界まで、一気に楽しめる一枚だ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年2月号より)
【information】
CD『ビオラは歌う4 バッハイズム/須田祥子』
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番/ペトロフ:無伴奏ヴィオラ組曲/イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番「バラード」/ヒンデミット:無伴奏ヴィオラ・ソナタ
須田祥子(ヴィオラ)
N&F
MF25904 ¥3300(税込)