New Release Selection

【CD】ベートーヴェン&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 /庄司紗矢香&テミルカーノフ

 庄司紗矢香、満を持してのベートーヴェン&シベリウスの協奏曲録音は驚くべき名演奏で、もはやこれは大家の芸だろう。特に前者。テミルカーノフの作り出すゆったりと深みのあるサポートの上で、庄司はあらゆるフレーズの細部にまで丁寧で血の通った表情を纏わせているが、それにしてもその繊細さは驚くべきもの。流れも自然でその音楽は清流の…

【CD】モーツァルトの4つのピアノ・ソナタとファンタジー/中井正子

 中井正子については、ドビュッシーやラヴェルの全曲録音・楽譜校訂などのイメージが強いかもしれないが、このモーツァルト・アルバムにより、ウィーン古典派の小粋で闊達な音楽語法を伝えるピアニスト、という印象も新たに持たれることだろう。アルバムは、モーツァルトが母を亡くした直後に書かれた短調のソナタ第8番で始まり、第10、11…

【CD】太陽と愛/ジュゼッペ・サッバティーニ

 10年ぶりの歌手復帰には驚いた。9〜10月の来日に合わせて、津田ホールでの1994年のライヴの再発。当時36歳。コントラバス奏者だった彼が本格的に声楽に取り組んだのは30歳の頃。2年も経たずにローマやミラノに主役デビューしていったのだからモノがちがう。このライヴも、6年の声楽キャリアとは到底思えない成熟した声を駆使し…

【CD】メッセージ/佐藤祐介&中川俊郎

 バリバリの現代音楽からパスティーシュ、おしゃれなCM音楽までジャンルでくくれず、かといって通り過ぎるにはなんとも気になる中川俊郎は、筆者には困った作曲家だったが、この表面的には人を食った自称“ヒーリングCD”に強い歴史意識が通底しているのをみて、謎が少し晴れた。膨大な量の、過去の音楽遺産の断片―それは旋律の直接の引用…

【CD】ストラヴィンスキー:ペルセフォーヌ /ラザレフ&日本フィル

 ギリシャ神話の春の女神ペルセポネの再生を描いた“音楽物語”のライヴ録音。ナレーションとテノール独唱に、活躍顕著な合唱を伴う編成も相まって演奏機会のなかった作品が、日本フィルの第700回定期演奏会を機にラザレフの指揮で日本初演され、かつ貴重な録音が残されたことをまず喜びたい。音楽自体は新古典主義的ながら美しい叙情味を湛…

【CD】ワン ハグ フォーユー/小松原利枝

 藤原歌劇団に所属し、今後アジアでの活躍も期待される楚々とした声が魅力のソプラノ、小松原利枝。宗教曲や歌曲を中心とした名曲アルバムだが、南仏の作曲家セヴラックの親しみやすい子守唄〈私の愛しいお人形〉やイタリア系でNYのメトロポリタン歌劇場で主に副指揮者として活躍したチマーラのラヴ・ソング〈郷愁〉など、20世紀の知られざ…

【CD】シューベルト:交響曲第8番「グレイト」 /ヤンソンス&バイエルン放送響

 ヤンソンス&バイエルン放送響は、いまやもっとも規範的な演奏をするコンビではないか。シェフ就任後15年間に築かれた彼らの関係性が、この「グレイト」に集約的に表れている。適切なボリューム感とそれを実現するための適切なテンポが長丁場を通じてぶれなく保たれ、シューベルトらしい歌心をしっかりととらえつつ、シンフォニックで記念碑…

【CD】dolceamaro 〜フルートとピアノで奏でるオペラファンタジー〜/イ・ジュヒ

 フルート奏者イ・ジュヒによる、主にロッシーニとヴェルディのオペラ名旋律の変奏・変容による佳品を集めたアルバム。19世紀の作曲家たちが名舞台から受けた豊かなファンタジーの世界を、ソウルからパリやニューヨークに学んだ彼女ならではの感覚と、持ち前の清潔な音色で丁寧に歌い上げる。ショパン14歳の貴重な室内楽や、ソナタながらオ…

【CD】コン・アフェット 〜ヴェネツィアン・バロックの栄華/丸山韶 & Ensemble LMC

 栄華を誇ったヴェネツィアの街の息遣いが、確かに伝わってくる。丸山韶は京都市立芸大を経て東京藝大古楽科に学び、国内外で主要アンサンブルに参加する一方、2014年には自身の呼びかけで古楽オーケストラ「La Musica Collana(LMC)」を旗揚げした、若きバロック・ヴァイオリン奏者。当盤ではLMCの盟友たちと共に…

【CD】双子素数/低音デュオ

 松平敬と橋本晋哉による異彩を放つユニット「低音デュオ」約3年ぶりの新譜もまた「斜め上」から攻めて来る。1曲目の徳永崇「感情ポリフォニー」からしていきなりホーミー歌唱が登場して面食らうが、収録曲全6曲共に声/バリトン+テューバ&セルパンといった“地味な”編成から驚くほどに多彩な音響と世界観を現出させている。先述曲では特…