川瀬賢太郎の名古屋フィル音楽監督就任後、初の年末「第九」ライブ。第1楽章のテンポは雄大な再現部含め、曲の指示以外一切緩めず、なのに窮屈さはなく呼吸感も十分。第2楽章のティンパニの気迫は強烈で、前半リピート時には変化も。第3楽章ももたれず流れつつ、音楽をゆったりと聴かせ、ニュアンス豊かな歌に満ちる。全曲に漲るリズミックで若々しい覇気と、細密かつ巧みな構築の両立ぶりは、すでに匠の域にあることを感じさせる。アマチュア合唱団に精巧さよりもエネルギーを解放させた判断もよく、市民が抱き合うというメッセージがダイレクトに伝わるかのよう。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年2月号より)
【information】
SACD『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/川瀬賢太郎&名古屋フィル』
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
川瀬賢太郎(指揮)
名古屋フィルハーモニー交響楽団
迫田美帆(ソプラノ) 福原寿美枝(メゾソプラノ) 清水徹太郎(テノール) 宮本益光(バリトン)
愛知県合唱連盟
収録:2023年12月、Niterra 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00860 ¥3850(税込)