鍵盤打楽器の表現世界をディープに探求する
打楽器の種類は膨大で、素材も奏法も多岐にわたる。そんな中で、鍵盤打楽器を中心とした果敢なプログラムで「B→C」に登場するのが、急成長中の悪原至。マリンバやヴィブラフォン以外の鍵盤打楽器はソロとして注目されることが少ないが、響きにそれぞれ個性がある。そうした鍵盤打楽器の魅力を引き出せるようなプログラムになっているという。
ふだんソロで使用される機会の少ない鍵盤打楽器を用いた作品として、チャイム独奏のためのヒンクル「フィアー・オブ・ミュージック──ボウ・ベル」と、グロッケンとクロテイルを一人で演奏するマウソン「オーラ」を選んだ。
クセナキスは悪原が国立音楽大学大学院での博士号取得の際にテーマとした作曲家で、ひときわ思い入れがある。今回は「打楽器とオーボエの織りなす音響空間が魅力」という難曲「ドマーテン」がとりあげられる。積年の研究成果の披露に注目だ(オーボエ共演:浅原由香)。
シリーズ恒例のバッハではヴィブラフォンとマリンバを使用する。「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番」は、第1楽章「アダージョ」がヴィブラフォンにピッタリなので選曲したという。そして名曲中の名曲の「シャコンヌ」はマリンバ版だ。また、「電子音響を用いて鍵盤打楽器の魅力を引き出すような曲を」というリクエストで、旧知の作曲家の北爪裕道に新作委嘱。パリのIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)でも学んだ気鋭の新作は、意外性に満ちたものになるだろう。
5月7日には、バッハとクセナキスを組み合わせた新譜を発売予定。こちらも楽しみだ。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2021年5月号より)
2021.5/18(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp