東京文化会館 《響の森》Vol.48 「ロマンスの夜」

独・露ロマン派音楽の森に分け入る

 東京文化会館が東京都交響楽団とともにクラシック音楽の名曲を届ける《響の森》シリーズ、その第48回「ロマンスの夜」が6月9日に開催される。指揮は群馬交響楽団音楽監督など数々のオーケストラで要職を歴任し、2004年から12年まで東京文化会館の初代音楽監督を務めた大友直人。

 今回の「ロマンスの夜」では、チャイコフスキーのオペラ《エフゲニー・オネーギン》から「ポロネーズ」とヴァイオリン協奏曲、ブラームスの交響曲第4番の3曲が演奏される。チャイコフスキーとブラームスは同時代の作曲家であり、時代を代表する不朽の名作が並べられている。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は1881年初演、ブラームスの交響曲第4番は1885年初演。両者の距離は近い。どういうわけか、チャイコフスキーはブラームスに対して「並の人間が天才扱いされている」など辛辣な評価をしていたが、現代から見ればどちらも19世紀ロマン主義の時代が生んだ最良の作曲家であり、ともに「ロマンスの夜」をなすにふさわしい。

 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲では、近年テレビ番組の出演などを通して新たなファンを獲得する木嶋真優が独奏を務める。本来であれば昨年7月開催の《響の森》第46回で同曲を演奏する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大により公演が中止となってしまった。今回、同曲で待望の出演が実現する。鮮烈な名演を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年5月号より)

2021.6/9(水)19:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp